2012年12月17日月曜日

コネティカット州ニュータウンの銃乱射事件

また、とても悲しい事件がアメリカで起きました。アメリカでは多くの学校や職場がlock down drill (ロックダウンドリル)という外部からの乱入者・犯罪に備えた訓練を定期的に行っていることもあってアメリカの多くの人々にとっては我が身・我が子に起こりうる可能性を否定することができない事件でもありました。アメリカに住んでいた頃、銀行強盗が追ってきた警察とが近所で撃ち合い逃亡し娘達が通っていた小学校でロック・ダウンが実施される事態がおきたことがありました。ロックダウン解除後、親が学校まで子供達を引き取りに来るように連絡があり妻が迎えに行ったのですが娘がすぐに出てこなくて先生達も娘がどこにいったが把握しておらず見つかるまで時間がかかったということがあり、妻にとって、この事件の報道は涙を流さずには見れないものでした。

こういう事件がおきるとアメリカでは「銃の保持の規制を強化すべき」、「犯罪を起こすのは銃でなくて人間だ」、「銃を所持していれば、反撃できたはずだ」などの様々な議論が巻き起こりますが、銃器保持の自由化を推進する「全米ライフル協会」(NRA) がアメリカでもっとも政治に影響力を持つロビー団体の一つであることなどもあって、政治・規制上の十分な解決はできていないというのが実情だと思います。

英国ガーディアン紙のオンライン版によりますとアメリカの人口は世界全体の5%未満だが、世界全体で一般市民が保有する銃器類の35-50%はアメリカで保有されているとし、保有率が世界一とランクされています。
http://www.guardian.co.uk/news/datablog/2012/jul/22/gun-homicides-ownership-world-list#data

それに加え、「Stand-your-ground law」という自己防衛のために他人を殺害しても過剰防衛として罪に問われることは無いという法律が21の州で制定されており、銃を自己防衛に使うという考えがより一般的なものとして受け入れられています。確かに、銃器をつかった強盗事件は日常茶飯事、ら凶悪犯罪もしばしば起きるアメリカのような広大な国では何かが起きたときにもっと近い隣人や警察まで車で30分以上かかるなどというところに住んでいる人々も少なく無く、自己防衛はより身近な問題といえるかもしれません。「どうせ悪いやつは非合法に銃器類を入手するのだから、身を守るためには銃を保持する権利を守ることは必要」という意見もよく耳にしました。

このような銃器保持の環境に加え、アメリカの抱える社会的・文化的な問題が本件のような悲劇が引き起こされる要因となっていると僕は思います。アメリカは自由で個人を尊重する資本主義の国ですがその良い面もあれば、逆に勝者と敗者・持つものと持たざる者との違い差が大きい格差社会であり、さらに社会的セイフティー・ネットも十分に整備されているとは言いがたい国です。このことは文化的価値観の形成にもつながっていると思え、たとえば「自分のことは自分以外に頼れない」とか「勝てば過程は正当化できる」だとか言うこともよく聞きました。「正義は必ず勝つというわけでも無く、戦うためには政治力・財力が必要」という話も雑誌や本などでよく読みました。

また、オチこぼれにならないように小さいときから全力疾走で何事もベストな結果を目指して物事に取り組むような姿勢を教えられていくことも、病気で休むと人の2倍働いて・勉強して遅れを取り戻さないといけないということも身をもって経験しましたし、娘達にもそんなことがありました。僕はアメリカで23年暮らしましたが今振リ返るとその間に人々や様々な制度の寛容さが減ってきた様な気もします。やはりこのような厳しい生き様を求めらる世の中では弱者は追い詰められら、拠り所が無くなったりして、何かのきっかけで精神的に問題が生じ理不尽な行動に走ってしまう人が出てきてしまうのかもしれません。

2005年のアカデミー作品賞を受賞した「Crash (邦題:クラッシュ)」という映画があります。これがアメリカ映画かと思えるぐらいに暗いストーリーが展開していくする映画である観点からのアメリカ社会の問題と多くのアメリカ人の苦悩とが具象化された作品といえるでしょう。これ映画を観るとニュータウンの悲しい悲劇が起きうるアメリカのいままで観たことの無かった一面を垣間見ることができると思います。



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