2020年9月30日水曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその3 勝つためには手段を選ばぬ選挙戦略

『困ったときのロジャー・ストーン』予告編 (ネットフリックス)

ネットフリックス製作のドキュメンタリー、『困ったときのロジャー・ストーン』。 これを観て、アメリカに長く住んでいた自分もとても驚きました。アメリカの選挙戦でこのように手段を選ばぬ戦略がまかり通っているとは思いもしませんでしたし、そのやり方を確立したと思われる中心人物がおおぴらにこのことを肯定しているからです。その中心人物とは、トランプ大統領は盟友で選挙参謀であったロジャー・ストーン氏。2016年大統領選挙に関わるロシア疑惑で実刑判決を受けるもトランプ大統領によって刑が免除された人物です。同じくロシア疑惑で実刑判決をうけたマナフォート元トランプ氏選対会長とは、80年代に設立され2010年までつづいた、アメリカ最強とまで言われたロビイスト会社の共同設立者の間柄です。彼らの選挙戦略の一つが陰謀論・陰謀論者たちの取り込みでした。


前回、アメリカ人のマスコミに対する不信感のマスコミの影響力が低いことを書きました。このようなマスコミに対する不信感が高い中、インターネット・SNSの普及とともに台頭してきたのが様々な陰謀論とその論者たちです。 とくによく報じられているが、Qアノン(ご参照:ニューズウィーク日本版)とインフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏 (ご参照:日経新聞)。 


もともとアメリカは個人主義が強くかつ人々の多様性をより容認する文化的な側面をもっています。これは日本やヨーロッパの国々とちがい、歴史が短くて主に移民で構成されたアメリカでは、国民共通の価値観・文化的思想などが希薄であるということで、アメリカ人の多くはそれぞれの拠り所を自ら見つけないといけないということが背景にあると思います。その拠り所を探す過程で、インターネットの浸透により、陰謀論・陰謀論者たちが容易に見いだされ、それを拠り所とし共鳴する人々が集まり、陰謀論サイトなどのヒット数、フォロアー数が爆発的に増え、それがまたマスコミ取り上げられ、さらに支持者が増えていくといった循環が続き政治的にも大きな影響力を持ちうる勢力となってきました。これらの陰謀論が極右的な思想に基づいていることに注目したロジャー・ストーン氏らの共和党の政治戦略家・顧問・選挙参謀らが選挙戦略に利用。陰謀論者たちも共和党有力者とパイプが自を正当化しメインストリームに進出、日の目を見る機会であるとの利害の一致の観もあって、トランプ大統領を支持・援護し、トランプ大統領も彼らの言い分を自らの言葉として発言することが増えたというのが現状です。その結果、荒唐無稽としか思えないような陰謀論にいわゆるメインストリームに属する人口層の信奉者が増加し2016年の選挙ではトランプ大統領当選に一役買った大きな支持勢力であったといわれています。

インフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏に関しては所在がはっきりとしているので、最近になって大手SNSプロバイダーなどからアカウントの削除などの処分を受けるようになってきいます。しかしその多くの信奉者たちや主宰者不明のQアノンとその信奉者たちは増え、トランプ支持のメッセージが匿名でネットで拡散されていくことは継続しており、今回の選挙でも引き続き、大きな影響力をお持つのか把握できていないということがあるかと思います。

このように勝つためには手段を選ばずという選挙戦略をとる陣営でもあるので、トランプ大統領が円滑な政権移行認めぬ構えと発言すれば、それは決してあり得ないことではないので大きな物議を醸しだすのです。

尚、下に添付した動画は、アメリカ公共放送サービスのインフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏に関するドキュメンタリー。英語ですか、観るに際しては地域限定の制限がないのでアメリカでなくとも全編を観ることができます。

(つづく)

『United States of Conspiracy』予告編 (PBSアメリカ公共放送サービス)


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