2020年9月28日月曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその1 間接選挙制度


Wikipedia Commons より引用

マスコミの報道だと世論調査ではバイデン氏支持が8~9%のリードをとり、トランプ大統領に関する様々な批判と暴露の報道が続き再選はかなり難しいのかなというのが多くの人の読みかと思われます。しかし、2016年のアメリカ大統領選挙はクリントン氏勝利という大勢の読みに反する結果でしたし、もしかする今回の選挙もそのようなことが起こり得るかもしれません。僕はあまり低くない確率でトランプ大統領再選はありうるのではないかと考えています。アメリカに長く住んでいた者の観点からそうなりうる背景を書いてみました。書いていくと長くなったので数回に分けて投稿しますが、読んでいただければ幸いです。

まずは、選挙結果に大きな影響を持つ、アメリカの大統領選が間接選挙制度であるということとその特殊性について書きます。 


『選挙人(Elector)』数 割当て Wikipedia Commonsより引用  


• アメリカ大統領選挙は州ごとに、特定の正副大統領候補ペアを支持する『選挙人(Elector)』を選び、その選挙人が選挙人集会で大統領及び副大統領を選出するという、間接選挙という形で行われます。建国当時、広大な国土を持つアメリカでは現実的に直接選挙を行えなかったということに由来しています。もちろん現在においては直接選挙に替えることは実務的には問題ありません。しかし間接選挙制度を続けることが、アメリカ2大政党、それぞれの州などの政治的利権を保つという利害関係が一致していることもあり、選挙制度を変更するという動きはでてきていません。国民もこれが当たり前と思っているところもあり、変えようという意見はほとんど上がってきません。

• 『選挙人(Elector)』総数は538人で州それぞれの人口に応じて人数が割り当てられます。

一概には投票者は支持する正副大統領候補ペアに投票、最も多く得票した候補がその州の選挙人全員を獲得するという勝者総取りという形で州ごとの選挙人が決まり、選ばれた選挙人はすべて最多得票を得た正副大統領候補ペアの支持者のみということとなります。例外はメインとネブラスカの二つの州のみ。

国の大統領を選ぶ選挙なのですが、厳密には州単位の選挙であり、その実施は州に委ねらているため、実施方法、使用される集計機器・システムなど州ごとに大きく異なることも珍しくはありません。

アメリカには日本のような住民登録という制度がないこともあり、投票するには有権者が自ら、居住する州で有権者登録(「Voter Registration」)を行なってからでないと投票ができません。このため貧困地域・下層階級の住む地域では登録を受け付ける自治体・公官庁のインフラも劣っているので、それらの地域では人口に対し登録済みの有権者数が少ないという格差が生じることが往々にしてあります。従って選挙戦略の一つに自らが有利となりそうな地域・階級などの対象に有権者登録を促し、サポートするということも行われます。

アメリカの州のほとんどは、それぞれの人口統計的属性・政治文化的属性などから歴史・伝統的に民主党支持という州と共和党支持という州にわかれています。このため実際の大統領選の勝敗は、「Swing State」という歴史的に支持政党が変わることが多く、しかも、選挙人の割り当て数の大きな州の結果に委ねられることになります。これらの州がなぜ「Swing」するかというと決まった支持政党のない層(Independents、概して党別で行われる候補者選びの予備選には投票をしない層)の人口が多いということが大きな要因ですが、それ以外にも人口の流動性が高い、それぞれの支持政党への忠誠心よりも自己判断のほうが強い傾向の人々が多く住んでいるということもよういんとしてあるようです。

ただし、一筋縄ではいかないのはこれら「Swing State」州すべてが常に選挙の「Battle Ground State」(接戦・激戦州 つまり前回選挙比べで支持政党が変わる可能性があり得る州)となるかというとそうではないということです。アメリカは、人口移動・経済情勢の変化といった移り変わりが特に激しい国なので、どこが激戦州になるかは、各々の年、さらには分析を行っている人・機関によってある程度異なってきます。一般的には10州前後、今年はペンシルバニア、ウィスコンシン、フロリダ、ミシガン、アリゾナ、ノースカロライナ、ミネソタ、ジョージア、テキサス、オハイオなどがよくあげられています。その中でもとくに揺れている(選挙結果の予想困難・最も激戦)と多くの分析に上がっているのいるのがペンシルバニア、ウィスコンシン、フロリダ、ミシガン、アリゾナ、ノースカロライナです。

このような背景・選挙制度なので、2016年大統領選挙のように、全国レベルでは得票数が少ない候補が勝利を収めるということが起こり得るのです。ごく一部の州の結果が全国レベルでも結果により大きく影響する傾向があるので、激戦州をより正確に見定め、どのように選挙を争うかということが選挙の勝敗を決定する大きな要素ともなり、選挙戦略を候補者と主に司る参謀役のCampaign Manageの力量が大きく問われるわけです。

(つづく)

<参照リンク>

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53798070



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