先日、コールドベルグ変奏曲について書きましたが今回はその続きで名実ともにこれぞ定盤!と言えるかと思われるグールドの録音について書きます。
カナダが誇る不世出のピアニスト、グレン・グールド。この曲は彼が最初と最後にメジャーレーベルでレコーディングしてものと言うだけではありません。アメリカ合衆国デビュー・コンサート・ツアー(当時22歳)で同曲を弾いて多大なる評価を享受したことが彼のピアニストとしての成功のきっかけとなったとも言われています。さらには彼が勝ち得た名声によって、この曲がより一般に知られるようになったともいわれています。コールドベルグあってのグールド、グールドあってのコールドベルグと運命的がつながりがあるとしか思えません。あまり知られていないかもしれませんが、彼はゴールドベルグの録音を4つ残しています(http://www.bach-cantatas.com/NVD/BWV988-Gould.htm)
僕はもう30年ほど前に彼の1981年録音のLPを買って初めて、グールドを知り、バッハの器楽曲の魅力にとりつかれました。なぜこれを買ったのかは良く憶えていないのですがたぶんステレオ雑誌のレビューでも読んだのだと思います。このレコーディングはより普遍的な魅力を持つようで、我が家でこれを聴いてこのCDを買い求めたクラシックとは縁のない友人・知人が何人もいます。
『The Goldberg Variations - Glenn Gould Plays Bach (1981)』というDVDにほんの少しだけグールドのインタビューがはいっていますがその際になぜ2度目の録音をするのかと聞かれ、リズム・テンポが云々と言ったあとに、嬉々として少しはにかむようにドルビーだのステレオだのと語っていたシーンがオーディオファイルの僕にとっては印象的だったのを良く憶えています。コンサート活動をやめて主に自宅のスタジオでのレコーディングが音楽活動の中心だったグールドならでは談話だったかと思われました。このDVDにはグールドがかの有名な「グールドの椅子」に座ってゴールドベルグ変奏曲を演奏をする様子が記録されており、ミキシング・ルームでの編集に携わる彼の姿もほんのチョとだけですが見ることができます。
グールドの椅子(YouTube)
グールドのゴールドベルグのCDで特にお薦めなのは、『Glenn Gould : The Complete Goldberg Variations (1955 & 1981): A State of Wonder』という生誕70年・没後20年記念として2002年に出されたCDセット。これには彼のメージャレコーディングデビューとなった1955年録音版と亡くなる直前に録音された1981年の演奏の両方がインタービューとアウトテイクがはいったボーナスCDと共に収められています。特筆すべきは、1981年の演奏が当時バックアップとして録音されたアナログ・テープをDSDに変換し編集・マスタリングしたバージョンで収められているということ。このCDセットの企画・作成に携わったプロデュサーがデジタルとアナログのテープを聴き比べ、アナログテープの音があまりにも良いのでそれを使用することにして当時の記録をもとにデジタル・マスターと同等に編集したとの談話を読んだことがあります。実際に素晴らしい音で、我が家で聴き比べをしたら全員アナログテープ・バージョンのほうがよいとの結論に達しました。
デジタル録音はきらびやかな音でチェンバロを彷彿させますが、アナログテープ・バージョンのほうは素晴らしくリアルなピアノの音でこちらのほうが演奏の細かなニュアンスがより良く判りグールドの表現の意図と感情がはっきりと伝わってくるような気がします。
『The Goldberg Variations - Glenn Gould Plays Bach (1981)』演奏シーンの一部
Glenn Gould 公式HP: http://www.glenngould.com/us/home
CDセット・DVD共にまだ買えるようです:
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