2018年10月12日金曜日

ヒラリー・ハーン 「バッハ無伴奏」 リサイタル




ここ数日のウィーンは、快晴で日中最高気温が20度前後の気持ちの良い秋の日々がづついています。

さった火曜日(10月9日)は、妻と二人で、ヒラリー・ハーンのリサイタルに行ってきました。会場はコンツエルト・ハウス、モーツァルト・ザール。プログラムは、JSバッバ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータから:

ソナタ第1番ト短調 BWV1001
パルティータ第1番ロ短調 BWV1002
パルティータ第2番ニ短調 BWV1004

アンコールは、JSバッバ ソナタ第2番イ短調 BWV1003の第3楽章「アンダンテ」

全曲版ではなくパリティータ2番・3番、そしてソナタ3番のみなのですが、ヒラリーが21年前に録音したデビューCDのバッバ無伴奏 「Hilary Plays Bach (邦題:ラリー・ハーン デビュー! バッハ:シャコンヌ)」は、僕にとって大好きなバッバのバイオリン無伴奏のレコーディングの一つです。彼女はアンコールで、無伴奏曲の楽章の一つを弾くことも多く、そのたびに一度通しのライブ聴いてみたいと思っていました。今シーズン、ヒラリーの無伴奏バイオリン曲のリサイタルがあると知ったときはとても嬉しくて、チケットを発売と同時に購入、この日を楽しみにしていました。

すでに何度か書いていますが、コンサートでヒラリーの演奏を聴くたびに、完璧な技術に裏付けられた天性の音楽性に感激させられていました。技術的にどんなに難しい曲を弾いていても音楽しか奏でられていない、聴こえてこないという、類稀な演奏を体験出来てきたからです。今回のリサイタルは、共演者がいなかったということもあるのでしょうか、その音楽性がとくに顕著に表れ圧倒されました。白眉はリサイタル最後の「シャコンヌ。圧巻でした。たった一台のバイオリンからは信じがたく沸き溢れる音楽の波にのみ込まれ、まるで別世界にトランスポートされたような感覚にさせられました。

バッハ無伴奏のように馴染み深く、歴代巨匠による数多くの名演のある曲の伝統の重みの下から新たな名演を奏で出すということは、どんなに才能に恵まれた音楽家にとっても困難で乗り越えがたい挑戦であると思います。ヒラリーの無伴奏をきいているとそれを苦渋せずにやってのけたという、天才の爛漫さを感じざる終えません。むろん、あるレベルを超えた音楽演奏は主観的な基準でしか良し悪しの判断をし得ないものなので、各々の好み・価値観によって、ヒラリーの無伴奏の演奏・レコーディングの評価は分かれるかとも思いますが、僕と妻にとっては、この日、無伴奏の演奏の一つの頂点を体験できた気がしました。

演奏中に客席で何かが倒れたような大きな音したアクシデントがありました。突然で僕は凄く驚いたのですが、ヒラリー全く反応を見せず、テンションをあげて、観客を演奏に引き戻し、引っ張っていってくれました。その集中力、プロフェッショナリズム、ミュージシャン・シップにも脱帽させられてました。

このリサイタルは、ヒラリー・ハーン バッハ無伴奏演奏世界ツアー初日。未録音であった、ソナタ1番、2番そしてパルティータ1番を収録したCDの発売に合わせたものです。彼女は、来年6月にウィーンに戻りソナタ2番、3番、そしてパルティータ3番を演奏する予定で、今からとても楽しみにしています。

ヒラリーは、12月の初めに東京でも二日に亘る無伴奏全曲リサイタルをするようです。都合がつくのであれば是非両日行かれることをお薦めします。詳細はこちらをどうぞ:https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=690


ヒラリーが21年前に録音したデビューCDのバッバ無伴奏に関しては以前このブログで書きましたのでご覧ください(こちら)。 母が入院・手術したため、92歳だった父のサポートをするために一時帰国したときのものですのでその文脈で読んで頂ければ幸いです。

ヒラリー・ハーン公式HP: http://hilaryhahn.com/

僕が好きなヒラリーのCD:

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