2015年6月7日日曜日

Qobuz 16bit/44.1kHZ ロスレス・高品位ストーリーミング ー その4(たぶん、最終回)


いままでquobuzの使い方、機能、音質について書いてきました。今回は現時点での欠点・改良して欲しい点や今後の展望などについてまとめてみます。

特に気になった欠点・改良して欲しい点等

Qobuz Desktopアプリに関して
  • 十分に安定していない・完成度が低い。最近は少しよくなりましたが、導入当初はかなり不安定で突然再生がとまり、アプリの再起動、果てはMacそのものの再起動が必要になることもしばしばありました。言語対応が十分で内容で、まずユーザーが言語を選べなく、会員登録内容と登録時のIPアドレスで自動的に表示言語が設定されます、ドイツ語がだめなわれわれにとっては不便なのですがこれはもしかすると意図的にそうなるようになっているのかもしれません。それでも、メニューバーはフランス語のまんまというのはちょとね~と思ってしまいます。  
  • アプリに自動アップデート機能がない。いちいちサイトに行ってダウンロードしてアップグレードしなければいかないのですが、もっと困るのがアップデートの有無すらHPになく、アプリダウンロードのページにリリースの日時・バージョンの記載がありません。で、ヘルプのページに行くと、問題がある場合は、ダウンロード・インストールをしなおするように、そうすると新しいバージョンになりますと書いてあります。 でも、新しいバージョンなのかどうかわかない!今日日、自動アップデートは必要ですよね。
音源に関して
  • 音源によってはMP3のストリーミングしか出来ない。これは音源使用の契約に関する問題だと思いますが、16bit/44.1kHZ ロスレス・ストリーミングが出来ない音源が思いのは多く有りました。特に気に入らなかったのはECMのカタログ。アルバム・曲を16bit/44.1kHZ でダウンロードし買うことは出来るのに、ストリーミングはMP3のみでした。  
  • 扱っている曲の制限。宣伝では2千4百万曲と謳っており、すごいと思うのですが、実際に探すと出てこないもののほうが多かったような気がします。まあ、これもレコード会社との契約・交渉の問題なのでしょうけど、特にちょっと時代をさかのぼると、無いのが多かった。たとえばピェール・フルニエで検索すると、あるのは30枚程度のアルバムのみ。その中には重複するもののありました。こういうときは、マーフィーの法則で、聴きたいものがないのですよね。あと、僕が好きなChannel Classicsのものはひとつもありませんでした。
  • 重複が多い。前回も書きましたが、特に50~60年代のジャズで重複するものがとても多いのはどうかと思いました。

今後の展望、当地での動き等

ちょっとランダムになりますが、僕なりにヨーロッパに住む者の観点から見てみると。

音楽を聴くスタイルの変化
音楽を聴くスタイルは、買ってダウンロードしたものをコンピュータやiDeviceで聴くという形から、ストリーミングに変わるというのはほぼ確実なトレンドだと思います。ほぼすべてのミュージック・ストリーミング・サービス・プロバイダーは、テンポラリファイルをスマホに落として、期限付き・あるいは認証条件つきで、オフラインでも聴くことできるオプションを提供しています。特に音楽鑑賞・オーディオを趣味にしているのでなければたぶんこれで十分かとおもいます。マイナーですが面白いトレンドとしてアナログ版の復活があげられると思います。このブログですでに取り上げましたが、今当地ではちょっとしたアナログ盤ブームで特に若い世代(十代後半~二十代前半)が男女問わず中古・新品のアナログ盤を買い求めている姿をよく見かけます。これと同時にヘッドフォンのみでなく、スピーカーでも聞くというのも同じ若い世代を中心にトレンドになりつつあるようです。もっと一般的な形だとYou Tubeで聴くというのともあげられると思います。多くのメジャー・アーティストがYou Tubeでオフィシャル・ビデオを流しているのもこの為で、レコーディングの売り上げにはつながらないかもしれませんが、広告・PRといったマーケティング・コストの節約、YouTubeから得られる広告費などを考えると、今の時代では理にかなった戦略といえるのではないでしょうか?

ワイヤレス・ネットワーク型オーディオ機器
欧米ではハイエンドに限らず、さまざまな価格帯でワイヤレス・ネットワーク型のオーディオ機器が出てきており、定着しつつあると思います。いわゆる単体のネットワーク・プレーヤー、前に僕のHPに書いたSonosのように多機能・小型・シンプルでそれぞれで完結したオーディオシステム (こちらをご参照)、WiFi・ネットワーク再生機能を内蔵したプリメインアンプやレシーバー等さまざまです。とくにSonosのようなシンプルで完結したシステムの人気が高いようで、今ではさまざまなメーカーが同様なコンセプトの商品発売しています。オーディオ機器専門メーカーだとLinnのKiko Systemや最近でてきたDevialetのPhantom(下の写真)などがよい例だと思います。

斬新なAll-in-One のハイエンド・オーディオ製品「Phantom」http://en.devialet.com より引用)

これらネットワーク型オーディオ機器は、各種ミュージック・ストリーミングサービスに対応しており、Spotify, Deezerはもとより、Sonos や Devialetはqobuz やTidalの 16bit/44.1kHZ高品位 ロスレス・ストリーミングに対応しています。 これらの機器の多くはAudio-Visual環境で使うことも想定された機器が多いので、YouTubeやNetflixといった動画ストリーミングサービスもサポートしているのがほとんどです。トレンドとしてはこのような機器がより一般的に消費者の間に浸透していくことが考えられます。

さすがご当地メーカー、フランスDevialetの機器はいち早くqobuzロスレスストリーミングに対応 http://en.devialet.com より引用)

需要と供給
これだけ動画ストリーミングがある時代ですので、高品位音楽ストリーミングということは、技術面からするとそれほど画期的では無いことのようにに考えられますので、今後の展望としては市場が広がるかどうかということだと思います。

僕が試聴・比較した限りでは16bit/44.1kHZ高品位ロスレス・ストリーミングとMP3レベルのストリーミングの差が顕著に聞こえたのはやはりメイン・システムで聴いた場合で、それ以外だとSonosで聴いて若干QobuzのほうがSpotifyよりいいねという程度、パソコンの内蔵スピーカーあるいはヘッドフォン端子で聞く場合はSpotifyのほうが聴き易く感じたことも多く有りました。ということは、消費者の観点からすると音の違いがわかるそれなりの機器を持った人でないと、ロスレス・ストリーミング・サービスに余計に料金を払う価値がはっきりとわからないという人の方が多いということが考えられるかと思います。ロスレス・サービスのほうが音源の数が少ないというとなおさらだと思います。こう考えると、ロスレス・サービスは、ハイ・レゾ・ダウンロードのようにニッチ市場に特化する方向で動くのかなという気がしています。

これらサービスの供給の先行きは音源の供給次第ではないかと思われます。これに関しては、レコード会社、そしてアーチスト次第なのでなんともいえません。でも動画ストリーミングを例にとると、Netflix、Hulu、Amazon、iTunes Storeなど動画のストリーミングは数多くありますが、一定料金で見放題というサービスの場合、どうしても観れるタイトルが限られてきて観たいものがない場合のほうが多いと思われた方が殆どなのではないでしょうか?更には一定期間過ぎると観れない(無くなる)タイトルも数多くあります。もともと、メールオーダーでDVDをレンタルするサービスで起業・躍進したNetflixはタイトルの制限などでそのストリーミング・サービスの存続が危ぶまれた時期もありましたが、ストリーミング独自の連続ドラマを作りそれがヒットしたことにより、ストリーミングが存続できたとされれています。音楽ストリーミングの場合はどうなるのでしょうか? 各社が配信タイトル・アーチストで差別化していくのか?プレイ・リストで差別かするのか?先行きがわからないところがあるかと思われます。アップルが最近発表した、人間のDJでライブで選曲・配信するプログラム・チャンネル付のストリーミング・サービスというのもいいかもしれません。これだけ多くの音楽がネット上に氾濫しオンデマンドですぐに聴ける時代にあっては、何を聴きたいのかわからないという矛盾やわからないから知ったものだけしか聴かないというジレンマもあり、また、昔のラジオのようなまだ無名なアーチスト・ヒットする前の将来の名曲の情報の発信源も実際には少なくなっているので、アップルの目の付け所は結構いい線いっていると思います。

音楽にとってもっとも大切なのはそれを産み出すアーチストたち。残念ながら彼ら・彼女らにとってはストリーミングの台頭は作品を多くの人々に聴いてもらえる機会の増大につながる可能性はたかくなるも、必ずしも朗報とはいえない部分のあるようです2013年1月のNYTimesの記事で
『ストリーミングが音楽業界の印税制度を揺るがす-ミュージック・ストリーミング業界の成長によって印税の流れが大幅に減少』(「Streaming Shakes-up Music Industry's Model for Royalties - as music streaming grows, royalties slow to a trickle」)というのがありました。これによると、
  • iTunesからの販売では一曲あたり7~10セントの印税がアーティストに払われていたが、Spotifyを例としたストリーミングの場合、有料会員による一曲あたりの再生には0.5~0.7セント、無料会員の場合は0.05~0.07セント支払われる。
  • ストリーミング・サービスの有料会員数が2千万人以上でないとビッグ・アーチストでもストリーミングサービスに配信権を与えたことによる売り上げの損失を補填できない、というメタリカ、ジミー・ページ、レッド・ホット・チリ ペッパーズを擁する音楽事務所『Q Prime』社長の談話もありました。
この記事は、アーチストにとっての印税の減少は、ストリーミングがメインストリームになるまでの過渡期のものなのかも知れないと締めくくっていましたが、実際にはどうなるのでしょうか?

CDなどへの影響
ヨーロッパ、少なくともウィーンでは家電量販店などでCD売り場の大きさは減ってきています。それは往々にネットによる音源販売・配信、特にストリーミング・ダウンロードの影響が大きいと思いますが、狭くなったCD売り場の代わりにアナログ盤売り場が新設され拡大されているということに示される、アナログ盤の躍進も大きな要素のひとつだと思います。流行りの音楽(ロック・ポップなど)の多くがアナログ盤で数多くでていうのはもとより、ここ数年の間にウィーンでは中古レコード店が新たにオープン、レコード市が開かれる回数もだいぶ増えました。中古レコード店やレコード市では若者を多く見かけ特に女性も多いのはより一般的にアナログ盤が受け入れられているということでは無いかと思っています(もしかすると単に流行っているというだけかもしれませんが...) 新品アナログ盤の多くには音源ファイル(殆どMP3ですが)をダウンロードできるコードが付いているということ、製造・販売量が増えたせいか、新品アナログ盤の価格がだいぶこなれてきて、一時期のCDの値段(こちらだと15~20ユーロ)で買える様になったも人気の理由かと思います。

それに反応するようにCDの値段はさらに安くなりこちらは10ユーロ前後、廃盤になり、プレミアムが付いていたCDの値段が、下がってきたことは嬉しいことです。これには、ロスレス・ストリーミング/ダウンロードの影響も大きいと思います、とくにクラシックで顕著に見られます。で、ちょっとうれしくないのは、中古レコードの値段が上がってきたこと。特にロックやポピュラーでは、特に初期盤でなくても中古のほうが再発の新品より高いということをよく見かけるようになりました。僕は、CDより音もいいし、値段もだいぶ安いしと中古LPを買うことが多かったのですが最近はCDにしようかと悩むことも増えてきました。ちなみに、クラシックやジャズの新規録音(特に新進のアーチスト)は、まだCDが主体かと思います。

とりあえずの結び
音楽愛好家にとっては多くの音源を手軽に思い立ったらすぐに探して聴けるということはすばらしいことだと思います。廃盤になって高いプレミアを払ってかったCDやレコードでしか聴けなかった音楽の多くもネットで探して聴けるのもとてもありがたいことだと思います。それと同時に音源と情報の洪水のなか新しい音楽・音楽家を見つけるのは意外と難しい時代になってきたのかもしれません。

ストリーミングはいいですが、将来的にずーと存続されるという確約はやく、また聴いていた曲・アーチストが配信をやめる可能性もあるわけで、また、ダウンロードだけだとデータを破損してなくしてしまう可能性も現実性をもったものですので、やはりものとしての媒体をもっていたいという気持ちも往々にあるわけです。

自分はというと、最近は一番よく聴くのがアナログ盤、その次がSpotify、リッピングしたCDをPCオーディオで聴く、そしてQobuzという順です。あれだけ、時間と資金を投資したCDやPC Audioが第3位というのは不本意ではありますが、とくにロックやポップスの新進のアーチストたちの音楽をアナログ盤で聴くとなにか、『CD時代に求めてきたオーディオの音は、実はアナログ盤の音だったんだ』という感慨にとらわれ、まるでオズの魔法使いのドロシーになった気持ちです。でも、クラシックはまだCD全盛ですからそれは、PCオーディオかもし配信されていればQobuzで聴いてよければ、あるいはなければCDを買うというのが今の僕にあったスタイルになりつつあります。でもQobuzできけてSpotifyできけないというのは殆どないので、Qobuzをやめて、Spotifyだけにしようかと考えているところです。


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