2018年6月16日土曜日

デジタル音源ファイル・フォーマット等に関して思っていること




去年の夏の終わりに、Qobuzのサービスを24/192までのハイレゾ音源がFLACフォーマットで配信される、Sublime+に加入したことは、こちらに書きました。そのあと、クロックを導入(こちら と こちら)したり、LANケーブルを替えたり(こちら)、MacMiniに仮想アース・システムエンハンサーを取り付けたり(こちら)、そしてJCAT/Intona USB Isolator を導入 (こちら)と我が家のデジタル音源再生環境は良くなってきています。そのためか最近気になってきたのが音源ファイルによる音の違いです。

同じ音源でもダウンロードするフォーマット(FLAC、AIFF、WAVなど)によって音が違いますし、FLACでダウンロードしてAIFFにコンバートしたファイルと、AIFFでダウンロードしたファイルとでも違いがあります。

ハイレゾがよいかというと、必ずしもそうとも言えず、クラシックだとメジャー・レーベル(例えばDG)の24/96より、マイナー/インディ・レーベル(例えばAlpha)の16/44.1のほうがより拡がりを感じリアルな音場で聴こえることもしばしばあります。60~80年代のロックでは16/44.1の方が好きだなと思うことの方が多いです。ハイレゾが出始めたことにHD Tracksから買ったイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」は、マルチチャンネルDVD‐Aからダウンミックスしたものであったようで、初期版のLPとも様々なバージョンのCDとも全く違ったミックスとバランスで低域がドカドカ鳴って興ざめした記憶があります。

CD音質(16/44.1)の高品位ストリーミングで、同一のレコーディングを聴いてもQobuzとTidalで音が違います。個人的にはQobuzが好みです。リッピングした音源とストーリーミングとでも音は違います。

何をやっても音が変わるのはオーディオだ、とはよくいったものです。一般的には『…データさえ同じであれば音は変わるはずが無い…』と信じられている、デジタルでも(データ以外の)何かが変わるとある意味でより顕著にハッキリと違いが出るというのが自分の経験則です。

以前MQAについて書きましたが(こちら)これも、Tidalで2Lというノルウェーのマイナー・レーベルのクラッシク・レコーディンを聴くとMQAはとても良い音なのですが、おなじくTidalで70~80年代のロックをMQAでリマスターしたものを聴いてもレコーディング次第という、かならずしもMQAと言うフォーマット自体の優位性を感じさせるものではありませんでした。

この2Lのサイトには、デジタル音源を色々なフォーマットで聴きくらべるために幾つかの曲を異なるフォーマットでダウン・ロードできるようになっているページがあります
(こちら→http://www.2l.no/hires/index.html?)。このページで気がついたのが、各ファイルのオリジナル・フォーマットの殆どがDXDと記されており、聞いたことが無かったファイル・フォーマットだったのでネットで検索してみると、352.8 kHz/24bitのPCMファイルであるとのことがわかりました。デジタル録音・編集で使われるDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)の世界トップブランドのひとつPyramix(ピラミックス)
を出している、スイスのMerging Technology社がDSD用音源を編集する目的で開発したDigital eXtreme Definitionというフォーマットだということが判りました。
(こちら→http://www.merging.com/products/pyramix/dsd-dxd)。 

1ビットのDSDフォーマットが編集には適していないという問題点を解決すべく、2004年発売されたピラミックスとSphynx 2, AD/DA用にMerging Technology社が開発したファイルフォーマットなのだそうです。当初はDXDで録音・編集し最終段階でSACD用にDSDに変換するというワーク・フローであったそうです。いまでは多くのDAWがDXDに対応しているとのこと(こちら)。 そういえば、『サウンド・クリエイターのための、最新版デジタル・オーディオの全知識 』(柿崎景二著)にソニーが音源編集のためにDSDをアナログに変換する装置を開発・販売していたと記されていました。

こんな風に色々と調べていくと、ファイル・フォーマットそのものがレコーディングの音質の優位性の決め手となっているのではなく、もともとの音源の良し悪しの方が音質を大きく左右する。SACDやDSDファイルの音源は確かに音が良いものが多いのですが、実際はDSDで録音された音源でもプロダクションの課程でPCMに変換されたものも多くあるわけで、DSD 対 PCMというよりも、DSDの音源は想定市場・消費者である、オーディオ・ファイル向けに良い音源が選ばれ、レコーディング・マスタリングなどのプロセスによって良いレコーディングに仕上がっているのではないか(あくまでも想像ですが…)、もともと24bitの装置が定着する前にデジタル録音された音源が24bitとして売られているけど何が変わるのだろうか?等など、色々な思いが湧き出してきました。

CDが出始めのころ、SPARS(Society of Professional Audio Recording Services)コードといって、録音、ミキシング・編集、マスタリングの3つのプロセスがアナログ機器を使ったものか、デジタル機器を使ったものかをコンパクト・ディスクに明記する制度がありました(AAD, ADD, DDD など)。 今のハイレゾの現状はもっと複雑で単に3文字のコードでは表すのは無理でしょうけど、ハイレゾ音源の商品詳細にもともとのマスター音源のWord Length (Bit Depth)、Sample Rate、ファイル・フォーマット(全工程DSD,PCMあるいは一部DS、PCM,アナログなど)を明記する透明性があればいいな、という恐らく叶わぬ思いが胸をよぎります。そうなるともっと安心して高い価格を払ってでもハイレゾ・ファイルを買うのですけどね。

オーディオの大先輩でもある友人に教えてもらった以下の2冊は、レコーディングが録音から最終製品になるまでどのような過程で加工されるのかがよくわかり参考になりました。



2018年6月14日木曜日

マリス・ヤンソンス指揮 ウィーン・フィル定期コンサート



去る土曜日(6月10日)は妻と、マリス・ヤンソンス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 のコンサートにいってきました。15時30分開演の昼間のコンサートで、
会場は楽友協会大ホール。プログラムは:

Béla Bartók 弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽
Peter Ilyich Tchaikovsky  交響曲第6番 op. 74, 「悲愴」

ヤンソンスとウィーンフィルは3年前に行った、マーラー交響曲3番のコンサート(こちら)がとても良く、演目も聴きたい曲だったので、先週の月曜の朝、職場から遅出(と、いっても20分程度)の許可を貰い、並んでチケットを購入(ウィーン・フィル定期コンサートチケット購入に関してはこちらも御参照)。とても期待して会場に向かいました。

前半のバルトークは、一度ライブで聴きたかった曲。打楽器の大迫力とチャレスタの繊細な音がきちんと聴こえてくる演奏をオーディオで再生するのはとても困難だと思われました。コンサートで聴いて初めてその可能性・良さを聴き取れる曲なのかもしれません。

後半のチャイコフスキー、ヤンソンスは指揮台に上がるも、とても長く感じさせる沈黙後タクトを挙げ演奏が始まりました。出だしはとてもストイックでまさに「悲愴」という感じ。しかしヤンソンスの解釈なのか、調子が悪かったのか、オーケストラの息が合っていないようで、アンサンブルの足並みが微妙に揃わず、弦楽器と管楽器のタイミングがずれているように聴え、それが気になって音楽に没頭できませんでした。隣の妻の「なんか合っていないね」と楽章間に耳打ち。

あれは、どういうことだったんだろうとわだかまりが残るまま、帰途に着きました。恐らく、今シーズン最後となるメジャーなコンサートだったので残念。名指揮者+ウィーン・フィルでもこんなことがあるのか?我々が未熟でこの解釈を理解できなかったのか? なんか不完全燃焼の感じでした。 

翌朝、妻が早朝テニスに出かけた後、持っている幾つかのレコーディングをつまみ聴きして、やはり土曜日の演奏は息が合っていなかったという結論に達しました。まえにも、書きましたが ウィーン・フィルの定期演奏会は日曜日が一番重要な日で、その前日の土曜日はゲネプロを兼ねたコンサートという位置づけもあるようですのでこのようなことは許容範囲なのかもしれません。ハッパさんのブログによると日曜日の演奏はかなり良かった様子(こちら)。ということは土曜日はやっぱり本調子でなかったのでしょう。

僕が日曜日に聴いた悲愴のレコーディング。カラヤンも好きですが、比べて聴くとムラヴィンスキーのレコーディング(左端)が一番好ましく、さすが名盤と思いました。:



2018年6月8日金曜日

Giuliano Carmignola (ジュリアーノ・カルミニョーラ)コンサート




さる月曜日(6月4日)は妻とジュリアーノ・カルミニョーラのコンサートに行ってきました。会場はコンツエルトハウス モーツアルト・ザール。
共演は、Marco Testori (Violoncello)、Jadran Duncumb(lute)、Riccardo Doni (harpsichord)。 プログラムは以下の通り:

Nicola Porpora:Sonata in G major op. 12/2 for violin and basso continuo (1754)
Pietro Locatelli:Sonata in D minor op. 6/12 for violin and basso continuo (1746)
Giuseppe Tartini:Sonata in G minor for Violin and Piano "Teufelstriller Sonata" (1713-1740)
Arcangelo Corelli:Sonata in F major op. 5/4 (1700)
Francesco Maria Veracini:Sonata accademiche in E minor op. 2/8
Antonio Vivaldi:Sonata in D major RV 10 for violin and basso continuo

アンコールは:
Tomaso Albinoni:Sonata da chiesa op. 4/1 in D minor for violin and basso continuo (1st movement: Adagio)
Antonio Vivaldi:Sonata in F major RV 18 for violin and basso continuo (4th movement: Allegro) (1716)
Arcangelo Corelli:Sonata in D major for violin and basso continuo (4th movement: Allegro)

初めて聴くか、聴いたことがあってもあまり憶えていない曲が殆どのプログラムでしたが、有名曲 タルティーニの「悪魔のトリル」では、聴き慣れたものとは全く異なる雰囲気を醸し出す演奏でカルミニューラ独自の世界が繰り広げられていることが良くわかりました。

古楽器を使うソリスト(バイオリン、フォルテピアノなど)のリサイタルはこのホールで聴いたことがありますが、小編成の古楽器アンサンブルを聴いたのは今回が初めて。レコーディングで聴く音とも一味も二味を違いとても興味深い経験をしました。

90年代にカルミニョーラがアンドレーア・マルコンと組んでだした数々のヴィヴァルディーのCDはとても新鮮で驚きを憶えその頃から持っていた「いつかコンサートで聴けたら良いな」という思いが叶いとても嬉しかったです。


JCAT: "10 tips how to get better sound in a computer audio system for free" ・「PCオーディオでお金をかけずに音をよくする10のヒント 」





前に、欧米で高い評価を得ているWindows用音楽再生ソフトJPLAYのハード部門として運営されているJCATのUSBアイソレーターを導入したことを書きました(こちら)。そこからきたニュース・レーターに掲題の記事があり、Windows環境に関する記述ですが、マックを使っている私もピントくるのがあり共感を覚えるところが多く、やる気させあれば誰でも簡単に試せることだけであったので抄訳(意訳)して紹介させて頂きます。



1.PC にインストールするアプリを最小限にとどめる。どんなに容量が多く・CPU性能が高くても、OS+音楽再生ソフト+DACのドライバー以外が起動しているのは音質に悪影響を及ぼす。

2.DACドライバーのコントロールでレイテンシー(latency)とバッファーサイズを最小値にする。

3.音楽再生ソフトのセッティングをKernel Streamingにセット。音量調整はソフトで行わない。ビット・パーフェクトであっても出力セッティングの違いで音は変わる。

4.音源のストーレッジ(HDD・SSD)はOSとアプリの入ったものとは別にする。音源は、外付けHDD・SSD, NASなど保存するのが音質的に望ましい。

5.OSの最適化をする。パワーセイバー、仮想メモリ、ログなどを出来るだけ使わないようにする。(原文には最適化ツールのリンクあり)

6.WiFiは使わず、Ethernetの有線接続にする。

7.PC/サーバーの電源ケーブルをアップグレードする。ビット・パーフェクトであっても、電源周りで音は左右される。

8.音楽再生中はディスプレーを消す。

9.一旦設定を終えたら、PCからディスプレー、キーボード、マウスなどを外して本体のみ(Headless)で音楽再生をする。

10.PCに振動対策を施す。インシュレーターを使ったり、オーディオ・ラックに入れることで、音質が向上する。とくにHDDの入ったハードには振動対策が必要。ビット・パーフェクトでありさえすれば、問題は無いというのはPCオーディオ最大の神話。

原文はこちらです:

一部、意見が分かれるだろうな?と思う箇所のありますが、試してみて音を聴いて判断されてはいかがでしょうか? Mac用のヒント集も近々執筆予定との事。楽しみです。

JPLAYの日本語サイトはこちらです:http://www.jplay.info/62main




2018年6月6日水曜日

ウィーン国立バレエ団 ジゼル (Giselle)


ウィーンは日中30度近くまで気温が上がる暑い日が続いています。
FBにも投稿したのでご覧になられた方もいらっしゃるかと思いますが、先週の水曜日(5月30日)に妻と共にウィーン国立バレエ団のジゼルを観てきました。会場はウィーン国立歌劇場。主な配役等は以下の通り:

Gisell: Maria Yakovleva
Herzog Albrecht: Masayu Kimoto(木本 全優)
Hilarion: Eno Peci
Myrtha: Kiyoka Hashimoto(橋本 清香)

振付・演出 Elena Tschernischova nach Jean Coralli, Jules Perrot, Marius Petipa
音楽 Adolphe Adam
舞台 Ingolf Brunn
衣装 Clarisse Praun-Maylunas
指揮 Paul Connelly

この日は、私たちがファンとして応援している ウィーン国立歌劇場バレエ団で主席(ファースト)ソリストとして活躍されている、橋本・木本ご夫妻を観るのが目当て。 二人とも素晴らしい踊りで妻ともども魅惑されました。

僕は、バレエはあまり観ないので詳しくはないですが、ジゼルはとくに面白く見ることができました。振付・演出が良くてストーリーが判りやすかったのかもしれません。ウィーンに越して来て直ぐの頃にも一度。国立歌劇場でジゼルを見たことがあります。そのときも同じ印象でした。