もう2年ほど前の事だが、ウィーン旧市街の中央付近にあるペーター教会 (Peterskirche)で行われた知り合いのバイオリニストの方のリサイタルで、その方に『私の先生で著名なバイオリニスト』と紹介して頂いたメルクス氏。クラシック好きを自負する自分だが、恥ずかしながらは氏の事は存じ上げていなかった。家に帰ってからアマゾン等で見てもほとんどCDは出ていない。ウィキペディアで見てなるほど、1950年代にはアーノンクールらと共に古楽復興の先鞭をとり、60〜70年代はバイオリストしてそして指揮者として主にバロックの数多いレコーディングを残し、バロックの巨匠と評価された氏であるが、現在ではあまり人々の記憶に残っておらず、ほとんどのレコーディングはCD化されていないか廃盤と書かれていた。ウィキペディアを信ずるなら氏の演奏手法(ビブラートを多用)、楽器設定(あご当てやスチール弦をつかう)と行った事がいわゆる最近の古楽器演奏の世界では正統と見なされない事が大きいと言う事であった。
どうしてもメルクス氏の演奏を聞いてみたくて、中古レコード店やネット・オークションで見つけては少しずつ買い揃えて行った。実際に氏のレコーディングを聴いてみるとその素晴らしさに驚き、高い音楽性に引き込まれるものであった。確かに今の「より歴史的に正統」とされる古楽器の演奏と比べると、テンポがよりゆったりとしていたりとか、より甘美で豊潤な感じに聞こえる曲もあるが、数多いアルバムを聴いて行くうちに氏の個性と音楽に対する考えてはっきりと一貫性を持って聴こえてくるような気がした。メルクス氏に師事してる音楽家の方に聞いたところによると、氏は「バロックは今のクラシックの黎明期の音楽なのだからその情熱が伝わるように弾かなければいけない」とおっしゃるという。確かにレコードを聴くと、より生き生きと新しい音楽と時代の幕開けの喜びが伝わってくる熱意のこもった演奏が多い感じがした。時代の変化に流されず、移り変わる人々の嗜好や価値観に媚びること無く、自らの感性と考えを貫き通した巨匠はその音楽的な本質で再評価されるべきではないかと僕は思っている。
先日ふと、グーグルで検索をしていて見つけたのがこれ 「Eduard Melkus - Great Archiv Recordings<タワーレコード限定>(http://tower.jp/item/3291238/Eduard-Melkus---Great-Archiv-Recordings)」、20枚組で¥9,100しかもオリジナルLPをもとにした紙ジャケ仕様。レコードで持っていたり、CDもレコードも持っているアルバムのあるのだが、帰省にあわせて購入。今実家で聴いている。箱を開けると韓国製であったのでちょっと心配になった音質も全く問題なし。むしろ音は良いように思われる。ライナーノートも英/日/韓の3カ国語。買ってよかった。クラシックファンにはお勧め。こういうものは次にいつ出るか分からないので売ってるときに買っておきませう。
このセットのリリースに関する記事:http://tower.jp/article/feature_item/2013/08/05/1101
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