ラベル 雑考 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 雑考 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年10月1日木曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景-その4(むすび)支持政党上の忠誠心・アンチ・トランプだけでバイデン氏は勝てるのか?



先日、第一回目の大統領候補公開討論が行われました(上の動画)。欧米の政治・時事評論家たちはこの討論会はいずれの候補者の支持率には大きな影響を持たないと評し、もともとトランプ氏支持者だった層はより支持が固まり、バイデン氏の支持者はよりその支持が強まったと述べています。また、討論会が終わった後のCBSニュースの調査によると、バイデン氏が勝ったとの回答は48%、トランプ氏は41%でした。10%は引き分けと回答したとのことで(日経新聞)評論家の分析を裏付けているとも言えます。『その1』で書いた、アメリカ大統領選挙の結果を左右するといわれている決まった支持政党がない層(Independents)に対しても大きな影響はなかったというのが大方の見方です。

これとは別に先週話題になったことが、レーガン政権下で大統領首席補左官及び財務省長官を務め、ブッシュ(父)政権下で国務長官を務めたアメリカ共和党の重鎮、ジェームス・ベーカー(James Baker)氏がTump大統領自身は支持しないが、共和党政権を守つためにトランプ大統領に投票すると述べたことです(WashingtonPost 紙)。共和党支持者間でも反トランプの意思を表す流れはあるようですが、アメリカでは(特に保守派)は支持政党にたいする忠誠心が強く・またそれが要求される国でもあると思います。政治家が帰属する政党を変えるということはよほどのことがない限り、その政治家の政治生命を終えるか短縮することにつながります。このことと『その2』で書いたようにもともと共和党支持者にはマスコミを信頼していない人が多いこともかさなってトランプ大統領が今から投票日までの間にどのような言動を行ってもその支持は揺るがないと考えて間違いないと思います。

そうなるとやはり、Indepdenents の層の動向がカギを握りますが、この層は一枚板ではなく、トランプ大統領は好ましくないからバイデン氏に投票するという人もいれば、トランプ氏個人の言動は気に入らないが政策・政見は自らの考えに相いるものがあるからトランプ大統領に投票、どちらも気に入らないから投票には消極的など様々な人々で成り立っています。ここで僕が気になるのはバイデン氏の政見・公約がはっきりと伝わってこないこと。氏からはアンチ・トランプのメッセージは強く伝わるものの、自分だったらどうする、自分が選ばれたら何がどう変わるのかということがあまり伝わってきません。Indepdenents の層になかにはおそらく、トランプ氏の言動は気に入らないがバイデン氏が大統領になったら何がどう変わるのか?ということで最終的に誰を支持するか決める人々も多いのではないかと思います。そのように考えると、アンチ・トランプを中心とした選挙戦略で勝てるのかという疑問もわいてきます。

今回のアメリカ大統領選挙はその結果いかんで世界が大きな転機を迎えうる重要な選挙になると思います。もしその転機を生む結果となれば、僕は地政学的にも大きなパラダイムシフトにつながっていくのではないかと考えています。僕にとってはとても気になる選挙です。


2020年9月30日水曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその3 勝つためには手段を選ばぬ選挙戦略

『困ったときのロジャー・ストーン』予告編 (ネットフリックス)

ネットフリックス製作のドキュメンタリー、『困ったときのロジャー・ストーン』。 これを観て、アメリカに長く住んでいた自分もとても驚きました。アメリカの選挙戦でこのように手段を選ばぬ戦略がまかり通っているとは思いもしませんでしたし、そのやり方を確立したと思われる中心人物がおおぴらにこのことを肯定しているからです。その中心人物とは、トランプ大統領は盟友で選挙参謀であったロジャー・ストーン氏。2016年大統領選挙に関わるロシア疑惑で実刑判決を受けるもトランプ大統領によって刑が免除された人物です。同じくロシア疑惑で実刑判決をうけたマナフォート元トランプ氏選対会長とは、80年代に設立され2010年までつづいた、アメリカ最強とまで言われたロビイスト会社の共同設立者の間柄です。彼らの選挙戦略の一つが陰謀論・陰謀論者たちの取り込みでした。


前回、アメリカ人のマスコミに対する不信感のマスコミの影響力が低いことを書きました。このようなマスコミに対する不信感が高い中、インターネット・SNSの普及とともに台頭してきたのが様々な陰謀論とその論者たちです。 とくによく報じられているが、Qアノン(ご参照:ニューズウィーク日本版)とインフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏 (ご参照:日経新聞)。 


もともとアメリカは個人主義が強くかつ人々の多様性をより容認する文化的な側面をもっています。これは日本やヨーロッパの国々とちがい、歴史が短くて主に移民で構成されたアメリカでは、国民共通の価値観・文化的思想などが希薄であるということで、アメリカ人の多くはそれぞれの拠り所を自ら見つけないといけないということが背景にあると思います。その拠り所を探す過程で、インターネットの浸透により、陰謀論・陰謀論者たちが容易に見いだされ、それを拠り所とし共鳴する人々が集まり、陰謀論サイトなどのヒット数、フォロアー数が爆発的に増え、それがまたマスコミ取り上げられ、さらに支持者が増えていくといった循環が続き政治的にも大きな影響力を持ちうる勢力となってきました。これらの陰謀論が極右的な思想に基づいていることに注目したロジャー・ストーン氏らの共和党の政治戦略家・顧問・選挙参謀らが選挙戦略に利用。陰謀論者たちも共和党有力者とパイプが自を正当化しメインストリームに進出、日の目を見る機会であるとの利害の一致の観もあって、トランプ大統領を支持・援護し、トランプ大統領も彼らの言い分を自らの言葉として発言することが増えたというのが現状です。その結果、荒唐無稽としか思えないような陰謀論にいわゆるメインストリームに属する人口層の信奉者が増加し2016年の選挙ではトランプ大統領当選に一役買った大きな支持勢力であったといわれています。

インフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏に関しては所在がはっきりとしているので、最近になって大手SNSプロバイダーなどからアカウントの削除などの処分を受けるようになってきいます。しかしその多くの信奉者たちや主宰者不明のQアノンとその信奉者たちは増え、トランプ支持のメッセージが匿名でネットで拡散されていくことは継続しており、今回の選挙でも引き続き、大きな影響力をお持つのか把握できていないということがあるかと思います。

このように勝つためには手段を選ばずという選挙戦略をとる陣営でもあるので、トランプ大統領が円滑な政権移行認めぬ構えと発言すれば、それは決してあり得ないことではないので大きな物議を醸しだすのです。

尚、下に添付した動画は、アメリカ公共放送サービスのインフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏に関するドキュメンタリー。英語ですか、観るに際しては地域限定の制限がないのでアメリカでなくとも全編を観ることができます。

(つづく)

『United States of Conspiracy』予告編 (PBSアメリカ公共放送サービス)


2020年9月29日火曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその2 アメリカ人のマスコミに対する不信感



今回はマスコミに関する不信感とネットによる様々な思想の拡散について書きます。

マスコミに対する信頼度 米ギャラップ社サイト(gallup.com)より引用

去年実施された米ギャラップ社の世論調査によると、59%のアメリカ人はマスコミ(新聞・ラジオ・テレビ)に対し不信感を持っているという結果がでています。上のグラフは、マスコミにニュースが『偏りなくすべてを、正確に、公平に伝える』といことに『とても信頼する』あるいは『概ね信頼する』との回答の割合のグラフです。この傾向は今にはじまったことではなく、同社サイトの詳細(https://news.gallup.com/poll/1663/Media-Use-Evaluation.aspx)をご覧いただくと分かりますが、調査が始まった1970年代をピークマスコミへの信頼度は下降しここ十年程はほぼ4割台となっています。


支持政党別のマスコミに対する信頼度 米ギャラップ社サイト(gallup.com)より引用

マスコミへの信頼度を回答者の支持政党別に見たのが上のグラフです。支持政党によってマスコミに対する信頼感の傾向がはっきりと異なっています。民主党支持者の7割程度はマスコミを信頼し、共和党の支持者は2割程度。トランプ大統領の任期が始まった2017以降、その乖離がより大きくなっていることがはっきりとわかります。決まった支持政党のない層(Independents)は四割前後です。

アメリカのマスコミは一部を除きその多くはよりリベラルで民主党支持の傾向がありますので、自らの観点が反映されていれば信頼できると評価しそうでなければ信頼できないと評価するのは当然の結果といえるでしょう。ということは、トランプ大統領を叩こうが、スキャンダルを暴露しようが、現大統領の支持層を揺るがすのは困難であるであろうということは想像がつくかと思います。ここで注目すべきは決まった支持政党のない層(Independents)もマスコミを信頼しているのは四割前後しかいないということです。つまり、マスコミの報道はSwing Stateの投票結果を左右しうる支持政党のない層(Independents)への影響も低いと考えらることです。したがって、マスコミの報道はアメリカ国民の考えに影響を及ぼすということは日本など比べるとだいぶ低いと言わざるを得ないでしょう。


マスコミ離れにさらに拍車をかけていると思われるのが、平均的に低いアメリカ成人の読解力かと思われます。OECD加盟国等24か国・地域(日、米、英、仏、独、韓、豪、加、フィンランド等 )が参加し、16歳~65歳までの男女個人を対象として実施された国際成人力調査(PIAAC)によると、アメリカ人で読解力が弱いと評価されたのは全体の21.7% それに日本は6.1%です(レベル1以下+欠損、5段階評価で最も読解力があるのはレベル5)。この結果をもとにアメリカ合衆国教育省はアメリカの成人(18歳以上)のおよそ4千3百万人強の読解力が弱いことにつながると分析しています。アメリカ合衆国国勢調査局によるとアメリカ成人はおよそ2億5千5百万人とされていますから全成人のおよそ17%の読解力は弱いことになります。このことからは、多くのアメリカ国民がニュースなどの時事情報を得るのはネット配信を含む動画・ラジオに頼る傾向があることがうかがえ時事情報ソースの多様化のなか、自らが信じたいもの・考えにあるものを真実・事実として受け入れる要素となっていっているのだと思います。



(つづく)

2020年9月28日月曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその1 間接選挙制度


Wikipedia Commons より引用

マスコミの報道だと世論調査ではバイデン氏支持が8~9%のリードをとり、トランプ大統領に関する様々な批判と暴露の報道が続き再選はかなり難しいのかなというのが多くの人の読みかと思われます。しかし、2016年のアメリカ大統領選挙はクリントン氏勝利という大勢の読みに反する結果でしたし、もしかする今回の選挙もそのようなことが起こり得るかもしれません。僕はあまり低くない確率でトランプ大統領再選はありうるのではないかと考えています。アメリカに長く住んでいた者の観点からそうなりうる背景を書いてみました。書いていくと長くなったので数回に分けて投稿しますが、読んでいただければ幸いです。

まずは、選挙結果に大きな影響を持つ、アメリカの大統領選が間接選挙制度であるということとその特殊性について書きます。 


『選挙人(Elector)』数 割当て Wikipedia Commonsより引用  


• アメリカ大統領選挙は州ごとに、特定の正副大統領候補ペアを支持する『選挙人(Elector)』を選び、その選挙人が選挙人集会で大統領及び副大統領を選出するという、間接選挙という形で行われます。建国当時、広大な国土を持つアメリカでは現実的に直接選挙を行えなかったということに由来しています。もちろん現在においては直接選挙に替えることは実務的には問題ありません。しかし間接選挙制度を続けることが、アメリカ2大政党、それぞれの州などの政治的利権を保つという利害関係が一致していることもあり、選挙制度を変更するという動きはでてきていません。国民もこれが当たり前と思っているところもあり、変えようという意見はほとんど上がってきません。

• 『選挙人(Elector)』総数は538人で州それぞれの人口に応じて人数が割り当てられます。

一概には投票者は支持する正副大統領候補ペアに投票、最も多く得票した候補がその州の選挙人全員を獲得するという勝者総取りという形で州ごとの選挙人が決まり、選ばれた選挙人はすべて最多得票を得た正副大統領候補ペアの支持者のみということとなります。例外はメインとネブラスカの二つの州のみ。

国の大統領を選ぶ選挙なのですが、厳密には州単位の選挙であり、その実施は州に委ねらているため、実施方法、使用される集計機器・システムなど州ごとに大きく異なることも珍しくはありません。

アメリカには日本のような住民登録という制度がないこともあり、投票するには有権者が自ら、居住する州で有権者登録(「Voter Registration」)を行なってからでないと投票ができません。このため貧困地域・下層階級の住む地域では登録を受け付ける自治体・公官庁のインフラも劣っているので、それらの地域では人口に対し登録済みの有権者数が少ないという格差が生じることが往々にしてあります。従って選挙戦略の一つに自らが有利となりそうな地域・階級などの対象に有権者登録を促し、サポートするということも行われます。

アメリカの州のほとんどは、それぞれの人口統計的属性・政治文化的属性などから歴史・伝統的に民主党支持という州と共和党支持という州にわかれています。このため実際の大統領選の勝敗は、「Swing State」という歴史的に支持政党が変わることが多く、しかも、選挙人の割り当て数の大きな州の結果に委ねられることになります。これらの州がなぜ「Swing」するかというと決まった支持政党のない層(Independents、概して党別で行われる候補者選びの予備選には投票をしない層)の人口が多いということが大きな要因ですが、それ以外にも人口の流動性が高い、それぞれの支持政党への忠誠心よりも自己判断のほうが強い傾向の人々が多く住んでいるということもよういんとしてあるようです。

ただし、一筋縄ではいかないのはこれら「Swing State」州すべてが常に選挙の「Battle Ground State」(接戦・激戦州 つまり前回選挙比べで支持政党が変わる可能性があり得る州)となるかというとそうではないということです。アメリカは、人口移動・経済情勢の変化といった移り変わりが特に激しい国なので、どこが激戦州になるかは、各々の年、さらには分析を行っている人・機関によってある程度異なってきます。一般的には10州前後、今年はペンシルバニア、ウィスコンシン、フロリダ、ミシガン、アリゾナ、ノースカロライナ、ミネソタ、ジョージア、テキサス、オハイオなどがよくあげられています。その中でもとくに揺れている(選挙結果の予想困難・最も激戦)と多くの分析に上がっているのいるのがペンシルバニア、ウィスコンシン、フロリダ、ミシガン、アリゾナ、ノースカロライナです。

このような背景・選挙制度なので、2016年大統領選挙のように、全国レベルでは得票数が少ない候補が勝利を収めるということが起こり得るのです。ごく一部の州の結果が全国レベルでも結果により大きく影響する傾向があるので、激戦州をより正確に見定め、どのように選挙を争うかということが選挙の勝敗を決定する大きな要素ともなり、選挙戦略を候補者と主に司る参謀役のCampaign Manageの力量が大きく問われるわけです。

(つづく)

<参照リンク>

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53798070



2020年3月13日金曜日

オーストリアのCOVID-19状況 - 3月13日

https://www.nature.com/articles/d41586-020-00190-6 より引用

こちらでの状況は刻々と急激に変化しています。オフィスは来週から一部を除き全面的に在宅勤務。 今日、さらにオーストリア政府の対策強化が示されて、来週から、食料品店、薬局、銀行、ガソリンスタンドなど一部を除く、商店・商業施設が閉店。学校もすべて休校。レストラン、カフェは15時まで営業可能。スイス・スペイン・フランスからのフライトをすべてキャンセル。感染が最も集中しているチロル地方の封鎖などです。


今、最も危惧されているのは重症患者のための集中治療室・人工呼吸器などの設備が足りなくなることのようです。イタリアで死亡患者が急激に増加しているのは、それらの設備が足らなく、医学的には助けらたであろう患者さんを充分に治療できなくなっているという現状に拠るとことであるようです。そのような状況で亡くなられた患者さんとそのご家族はさぞ無念であろうと察します。

日本人のマスコミ・ネットでは、日本の対応のまずさを批判する記事・書き込みも多いですが、海外から見ていると、日本が行ってきたことを海外各国は追従しているようにも見えます。観客無しでスポーツ試合を行うこと、学校を休校にしたこと、イベントの中止などなどです。

人口一億2千6百万の日本では国内感染者が668人ですが、八百八十万人のオーストリアでは(3月12日現在)ですが、442人。日本の対応は功を奏しているといえると思います。

2020年3月9日月曜日

COVID19

Wikipedia Commons credit: CDC/Dr. Fred Murphy (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Coronaviruses_004_lores.jpg / PD-USGov-HHS-CDC)

欧州でも大きな問題となっているコロナウィルス。COVID-19(Corona Virus Disease 2019)というのが正式名称です。昨夜の時点でのオーストリアの確定症例は102名です。
職場の緊急時対策委員会の一員でもあるので、対策に結構時間を割かれています。

こういうことが起きてみて、一番難しいと思うことは、人に対する対応です。どのようにして、情報疎通の透明化保ち、かつ、人々がパニックに陥るのを避けるかと言う事です。どのような文面と形で最新の展開を伝えるかで長時間議論し伝えても、多くの人たちは、自らで解釈・判断を下し、最も信じたいという思う情報を元に行動を起こす傾向がみられます。今わかっていることが、後々実は正確ではなかったことがあるかもしれないと思う人も多いようです。実際に状況は刻々と変化しています。僕の職場は科学者(自然科学の分野で博士号を持つ人達)や修士号以上を取得した高学歴者が多く働いているのですが、それでもこの傾向は顕著です。

あと興味深いのは、個人的な知り合いのお医者さんの間でも、それぞれ意見が異なり、『からだの免疫力・抵抗力を保ってさえいれば良い』という方もいれば、『深刻さが充分に把握されていない。身の回りの消毒を怠るべきではない』という方もいて、意見が一枚岩ではありません。

オーストリアにはもともとマスクをするという習慣が無い上に、犯罪・テロを防止する目的の覆面禁止法が3年ほど前に施行されており、医師の診断書がある場合を除きマスクの着用が禁止されているので、ここの人々がマスクを買いに走るということがありませんが、手等の消毒液は早々と店頭から消えてしまい、病院の在庫の不足が危惧されています。

ウィーンでは、2~3の学校が閉鎖されたことと、大きな学会の自主延期、中国、イラン、韓国、イタリア北部などの感染地区への直行航空便、列車、バス便の運休などの対策が講じられています。今のところ街に大きな変化が起きているという印象は受けません。コンサート・オペラなどは通常通り行われており、観客もそれほど減ったという印象は受けません。レストランなどもちょっと人が減ったかなというぐらいで普通に営業しています。しかし、街を歩くと、いつもは観光客で溢れかえっている旧市街も、明らかに人出が減っており、特に東洋人はほとんど見かけなくなりました。


まとまりの無い文章になってしまいましたが、僕の目からみた今のウィーンの様子はこんな感じです。


2016年11月9日水曜日

アメリカの大統領選挙 - トランプ氏の勝利で考えた


トランプ氏の勝利は、イギリスのEU離脱に続いて予期せぬ投票結果になった。

私見を述べると、この選挙は、クリントン対トランプというより、エスタブリッシュメント対アンチ・エスブリッシュメント あるいは「改革」対「現状拡大路線」として見ると理解できる結果かと思われる。

数々の暴言、脱税疑惑・女性問題といったスキャンダルにもかかわらずトランプ氏が勝利を収めたということは、いかにアメリカ国民の多くが抜本的な改革・変化を求めているかということの表れだと思う。要するに、米国政界にしがらみも無く、経済的に誰にも頼る必要のない財力があり、選挙戦で従来の政治家にとってのタブーをことごとく破って勝ち抜いたトランプ氏を多くの米国民は強烈なアンチ・エスブリッシュメント候補だと捕らえ、改革の旗手として選んだのであろう。米国議会の上院・下院とも議席の過半数を氏の政党である共和党が獲得したというは、トランプ政権の政策が実行される下地が出来たということであり、大統領選の結果と同じかそれ以上にこれからのアメリカの動きに大きな含意を持つことであると思う。

数年前にこのブログでも書いたが(こちら)この背景にはアメリカにおける、富の格差の拡大とそれに伴う、中産階級の消失。限定的である分野では完全に欠落している社会保障制度、高等教育費の高騰などにより、中・下位層の人々にとって、自らあるい次世代の経済的状況を改善させうるであろう機会損失による希望の喪失があると思う。

さらには、「Audacity to Hope(大いなる希望を抱く)」という理想を掲げ、国民から現状改革を期待されて初のアフリカ系アメリカ人として大統領に選ばれたオバマ氏の政権8年間の結果に対する失望もあったのではないかと思う。この間、米議会は共和党主導でことごとくオバマ政権の政策実行を阻止したということはもちろん周知のことではあり、その結果、国民のアンチ・エスブリッシュメント感情は高まり、トランプ氏が共和党候補として選ばれた主な要因のひとつであると考える。昨日、ドイツ国際公共放送(Deutsche Welle)のニュースを見ていたら、オバマ政権下では富の格差が拡大したとアメリカの過去8年のジニ係数推移をもとに報道していた。

クリントン氏、共和党の有力者、マスコミ、有識者などがトランプ氏や氏の支持者を軽視・侮辱するような言動は、トランプ氏をサポートする人々にとっては自らにむけて発せされた侮辱であり、ある意味では民主主義化における正当なプロセスを批判し民意を無視・軽視したと考える人々がいたとしても不思議ではない。

格差の拡大により、一部の上位層の人々を除き多くの人々が生活の質(Quality of Life)が改善するどころか逆に下がってきているということに痺れを切らしているという現象はアメリカ特有のものではなく、ヨーロッパ、新興国、途上国でも顕著になってきていることである。 このような状況の中、民主主義の正当なプロセスの得てポピュリストが台頭し権力を手中に収めている世界的な傾向は、過去の歴史を振り返ると世の中が乱れる時代に突入している過程との類似点も多く、憂うものである。

ここ数年、多くの著名経済学者が格差による負の影響を明らかにし警告を鳴らしているが、それらを真摯に受け止め、格差拡大により苦悩を強いられている人々の現状を理解し、それらを抜本的に解決していけるような指導者・体制が生まれてくることが理想なのであろう。世界の一市民として、二人の娘の親として、これからの世の中が歴史の轍を踏まずに破壊につながらない改革が進むことを望み祈らざるをえない。


御参考:『ピケティ、大御所2人と「格差」を語る』:http://toyokeizai.net/articles/-/62725




2016年7月20日水曜日

両親の愛犬、柴犬のアレキサンダー 

Leica M9, APO Summicron 75mm ASPH

母は入院が3泊4日から7泊8日に伸びたものの無事退院、現在は自宅療養中。その後、父が胸が痛いと言って、かかりつけの病院に電話するとすぐ救急車を呼ぶようにと言われ、父に付き添って救急車に乗って大病院まで行って色々と検査してもらった結果、肋骨が折れてたというパプニングもありましたが、なんとか落ち着きました。ご心配いただきありがとうございます。

さて上の写真は柴犬のアレキサンダー、由緒正しい御生れとのことなのですが、ご縁があり血統なんかに無頓着な僕の両親の元にやってきました。もう10年ほど前のことです。このブログでも、カメラやレンズのレビューで時々モデルとして登場しています。

お散歩ルートの首里城公園にて Leica M9, Summilux 35mm ASPH Pre FLE
群れに帰属する本能がとりわけ強い(ように思える)アレキサンダー、父曰く、母がボスで、父は彼の同列以下だと思われているとのこと。母の言うことはほとんど何でも聞くし、母が撫でると終わるまで喜んで尻尾を振ってます。父には撫でさせてあげようという態度、ちょっと撫でられるととっとと去っていくか、もういいと軽く噛み付くふりをする。僕が触ろうとするもんなら唸ってマジに噛み付こうとする…。数年前、実際に噛まれて結構たくさん血が出て大騒ぎになった。散歩に連れてく時も僕にはリードを付けさせない。一番困るのは、夜になると僕に吠えるとこ。なぜか日中はほとんど吠えません、でも夜になると、お客さんいつまで粘るんだよ〜とでも言わんばかりにギャンギャンと吠える。帰省するたびに朝晩、散歩に連れっていて、餌もやっているのに、、、母の入院中、見舞に行って、買い物をし帰宅が遅くなった時、急いで父の夕食を作っている脇で吠えまくくられたのはさすがにストレスでした。

でも、両親にとってはとても可愛い愛犬のようで、何よりも犬の散歩をしているおかげで二人とも高齢にもかかわらず足腰がしっかりしている、犬のことで会話も弾みQuality of Lifeにも貢献してるようなので、僕は我慢するかと心に決めてはいるのですが、、、相手は犬だから話し合いで解決ってわけにもいかないしね〜。

Leica M9,  APO Summicron 75mm ASPH

2016年6月29日水曜日

英国のEU離脱!

今週のウィーンは昨日まで20度前半の気温で先週から連日続いていた30度をこえる夏の暑さから一息ついたところですが、今日からまた夏の暑さに戻りました。例年より早く突然夏が訪れた感じです。

ヨーロッパは、英国のEU離脱の国民投票結果の話題で持ちきりです。オーストリアで危うくネオナチとの関係があるとされる極右政党の候補が大統領に当選しそうなったり、アメリカでトランプ旋風が起こったり、フランスやドイツでの極右政党の台頭など、反既存政党・政権の国民感情感情が高まっていることの反映なのではないかと思っています。これも著名経済学者たちがそのリスクを警告しているより極端に偏りつつある富の分配がその大きな要因のひとつとなっているのではないでしょうか? 

英国が実際にEU離脱をすることが確定すると世界経済・政治に及ぼす影響は計り知れません。おそらく想像以上に悪い方向に行くのではないかと危惧しています。イギリスの国民投票は法的拘束力は持たないようなので、自らの政治生命をかけても客観的な立場からの国益・世界の利益を優先し、すくなくとも結果を再考させられる方向に持っていけるリーダーがイギリスにいるといいのですが...。

2015年7月29日水曜日

『音楽の時代は終わった』 - 日経新聞(nikkei.com)のニュース解説記事 『ニュースをこう読む-丸さん、「音楽聴き放題」ってどうですか? 』

7月3日付けなのですが、先日nikkei.comのニュース解説記事、『ニュースをこう読む-丸さん、「音楽聴き放題」ってどうですか? 』を読みました。 日経新聞編集委員 村山恵一氏によるソニー・ミュージックエンタテインメント元社長の丸山茂雄氏 へのいわゆるサブスクリプション型と呼ばれる音楽配信サービスが日本の音楽業界に与える影響に関するインタビューをまとめた形での解説でした。

ここで丸山氏は『音楽の時代は終わっている』と述べており、氏の見解は『マーケットは大きいが、サブスクリプション型音楽配信サービスは年齢の高い音楽好き向き』、『若者は音だけでは満足しないので映像が主、音楽が従というコンテンツのビジネスモデルが必要』ということでした。

確かに、確かに今の世代のアーチストのコンサート等はパフォーマンスの要素が前面に出されるヴィジュアルなものも多いですが、我が家の場合、主にスポティファイを利用しているのはティーネージャーの娘たちで、統計をみても欧米では若い人(20~30代)がスポティファイなどのサブスクリプション音楽配信サービスの顧客の最大の年齢層。若い人たちは常に音楽を流してるというのが割りと当たり前で、ラジオ局もだいぶ前から主に音楽と主にトークという風にはっきりと分かれています。もちろんYou Tubeやネットフィックスといったネットによる映像配信サービスによる娯楽のメディアの多様化ということは顕著ですが、映像と音楽を結びつけたMTVでさえ、最近はミュージック・ビデオよりもドラマやリアリティー・ショーが中心になっています。音楽に対する姿勢というか生活の中の音楽役割的なものが日本と欧米とでは文化的に異なるのかもしれませんね。

日経の記事はこちら:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO88750310R00C15A7000000/

2014年7月24日木曜日

Made in Ryukyu


 欧米の大きな美術館・博物館でアジア美術というと必ずと言っていいほど展示されているのが漆器。作られた国の名前には、China、Japanと並んでRyukyu Kingdom、The Ryukyu Islands、あるいは単にRyukyuいう表記をよく見かける。明治時代に県として日本の一部として併合される以前の沖縄で作られた漆器には史実に基づいた正確な表記がされているのである。もう大分前の事であるが、ニューヨークに住んでいた頃、メトロポリタン・ミュージアム開催されたアジア漆器特別展を見に行ってRyukyuの表記を見たときには胸に熱いものを感じた。

 昨日、里帰り中の沖縄の実家で娘たちに、「このフォークの裏にRYUKYUて書いてある、沖縄でつくたものかな?」と聞かれ初めて気がついたのがこれ(上の写真)。両親が結婚のお祝いに頂いたというカトラリーセットのフォーク。立派なヴィンテージものである。僕が物心付いたときから使っていたが半世紀近く発った今、これがMade in Ryukyuであったということを初めて認識した。多分、米軍やその関係者を主な顧客対象として製造/販売していたのであろう。第2次大戦後、西側ドイツの工業製品に表示された原産国名が「Western Germany」、「West Germnay」、「Germany」、そして「EU」と歴史の動きとともに変わって来たように、これらカトラリーも沖縄の歴史を反映したものであると言えるのかもしれない。

 

2013年6月26日水曜日

武神館


武神館本部道場
一時帰国で午前8時に日本に到着。成田から家内の実家に着いてすぐに目黒から千葉県の野田市へ。娘達が習っている古武道/忍法の武神館の本部道場があります。たまたまウィーンの彼女らの先生が修行/稽古に来ており、その先生の日本滞在最終日であったので娘達はどうしても当日にそこでの稽古に行きたいと...。娘達は東京での移動に不慣れなので僕が引率。実は一年半にも宗家、初見先生の稽古に娘達をここまでつれて来たことがあります。

僕は2時間半ほどの稽古を見学。見るだけでも面白くまた先生達のお話もとても興味深いものがあります。それぞれの道でそれを究めた人たちに共通する達観した見識/造詣深い内容で穏やかな自信に満ちています。稽古に来ている人々のほとんどは外国人、特に欧米・オセアニアからの来ている人達がほとんど。話を聞くと休暇を取って毎年2〜3回2週間ほど来るとのこと。95%以上が男性。娘達以外はみんな有段者でちょっと場違いな気もきますが上級者の人たちの稽古ぶりを見るだけでもためになるのではと思っています。 

武神館に関しては偶然ウィーンで知りました。日本ではほとんど全くと言ってよいほど知られていません。これはウィベディアの日本語と英語のエントリーの差を見れば海外での関心の方が高いことがよくわかると思います。さらに日本では忍法というと変な誤解もあるようですがこれは大変残念なことだと思います。武神館で教えていることはスポーツ化された武術ではなく、実戦的なものであり護身術としてもとても役に立つものだと思います。実際に、娘達が通うウィーンの道場の有段者たちの間では、強盗に襲われて身を守る際に相手の腕を折ってしまい逆に告訴された、財布を狙ったスリを取り押さえて警察に渡した等という武勇談に事欠きません。アメリカでは軍隊の一部・警察機関等でも採用されているようです。技も古来の琉球空手などに通じるところもあり、日本古来の武術の伝統と技を保っている流れの一つだと思います。僕ももっと若い頃に知っていたら入門していたと思います。このようなものこそクール・ジャパン戦略などの一環として絶やさない援助が必要だと思います。

2時間半ほど稽古の後、ウィーンの先生と一緒に有楽町ガード下の焼き鳥屋へ。娘達も初めての経験でみんなで焼き鳥/串焼きに舌鼓をうち、それぞれ帰路につきました。時差ぼけと疲れでフラフラな僕は嬉々として歩く娘達をみて体力があるな〜と関心しました。

武神館に関して:ウィキペディア(日本)ウィキペディア(英語)

娘達が通うウィーンの道場のサイト:http://www.ninpo.at/



2012年12月17日月曜日

コネティカット州ニュータウンの銃乱射事件

また、とても悲しい事件がアメリカで起きました。アメリカでは多くの学校や職場がlock down drill (ロックダウンドリル)という外部からの乱入者・犯罪に備えた訓練を定期的に行っていることもあってアメリカの多くの人々にとっては我が身・我が子に起こりうる可能性を否定することができない事件でもありました。アメリカに住んでいた頃、銀行強盗が追ってきた警察とが近所で撃ち合い逃亡し娘達が通っていた小学校でロック・ダウンが実施される事態がおきたことがありました。ロックダウン解除後、親が学校まで子供達を引き取りに来るように連絡があり妻が迎えに行ったのですが娘がすぐに出てこなくて先生達も娘がどこにいったが把握しておらず見つかるまで時間がかかったということがあり、妻にとって、この事件の報道は涙を流さずには見れないものでした。

こういう事件がおきるとアメリカでは「銃の保持の規制を強化すべき」、「犯罪を起こすのは銃でなくて人間だ」、「銃を所持していれば、反撃できたはずだ」などの様々な議論が巻き起こりますが、銃器保持の自由化を推進する「全米ライフル協会」(NRA) がアメリカでもっとも政治に影響力を持つロビー団体の一つであることなどもあって、政治・規制上の十分な解決はできていないというのが実情だと思います。

英国ガーディアン紙のオンライン版によりますとアメリカの人口は世界全体の5%未満だが、世界全体で一般市民が保有する銃器類の35-50%はアメリカで保有されているとし、保有率が世界一とランクされています。
http://www.guardian.co.uk/news/datablog/2012/jul/22/gun-homicides-ownership-world-list#data

それに加え、「Stand-your-ground law」という自己防衛のために他人を殺害しても過剰防衛として罪に問われることは無いという法律が21の州で制定されており、銃を自己防衛に使うという考えがより一般的なものとして受け入れられています。確かに、銃器をつかった強盗事件は日常茶飯事、ら凶悪犯罪もしばしば起きるアメリカのような広大な国では何かが起きたときにもっと近い隣人や警察まで車で30分以上かかるなどというところに住んでいる人々も少なく無く、自己防衛はより身近な問題といえるかもしれません。「どうせ悪いやつは非合法に銃器類を入手するのだから、身を守るためには銃を保持する権利を守ることは必要」という意見もよく耳にしました。

このような銃器保持の環境に加え、アメリカの抱える社会的・文化的な問題が本件のような悲劇が引き起こされる要因となっていると僕は思います。アメリカは自由で個人を尊重する資本主義の国ですがその良い面もあれば、逆に勝者と敗者・持つものと持たざる者との違い差が大きい格差社会であり、さらに社会的セイフティー・ネットも十分に整備されているとは言いがたい国です。このことは文化的価値観の形成にもつながっていると思え、たとえば「自分のことは自分以外に頼れない」とか「勝てば過程は正当化できる」だとか言うこともよく聞きました。「正義は必ず勝つというわけでも無く、戦うためには政治力・財力が必要」という話も雑誌や本などでよく読みました。

また、オチこぼれにならないように小さいときから全力疾走で何事もベストな結果を目指して物事に取り組むような姿勢を教えられていくことも、病気で休むと人の2倍働いて・勉強して遅れを取り戻さないといけないということも身をもって経験しましたし、娘達にもそんなことがありました。僕はアメリカで23年暮らしましたが今振リ返るとその間に人々や様々な制度の寛容さが減ってきた様な気もします。やはりこのような厳しい生き様を求めらる世の中では弱者は追い詰められら、拠り所が無くなったりして、何かのきっかけで精神的に問題が生じ理不尽な行動に走ってしまう人が出てきてしまうのかもしれません。

2005年のアカデミー作品賞を受賞した「Crash (邦題:クラッシュ)」という映画があります。これがアメリカ映画かと思えるぐらいに暗いストーリーが展開していくする映画である観点からのアメリカ社会の問題と多くのアメリカ人の苦悩とが具象化された作品といえるでしょう。これ映画を観るとニュータウンの悲しい悲劇が起きうるアメリカのいままで観たことの無かった一面を垣間見ることができると思います。



2012年10月1日月曜日

アメリカの学生ローン




 夏休みに帰省した際に買った本の一冊 『知らないと恥をかく世界の大問題 3』(池上彰著)に 「第2のサブプライムローンか?」との見出しでアメリカの学生ローンのことが書かれていた。 その章の締めくくりの方に『...サブプライムローンを組んで無理してマイホームを買ったように、無理してでも大学に進んでる人たちがおおいのですね。』(p.101)と記されている。なぜアメリカで大学に行くには借金する必要が出てきたのか、なせそれまでしてでも大学に行かなければならないと思う人たちが多いのかについて、23年のアメリカ滞在の経験と大学進学を2年後に控えるアメリカ生まれアメリカ育ちの子供を持つ親の観点から、説明を付け加えてみたいと思う。尚、この本に書かれている事に対して批判しているのではないので誤解のなきようにお願いします。

 アメリカ人が借金までして大学や大学院に行くというのにはアメリカの雇用環境の変化、高等教育学費の高騰などの背景があると考えられる。1970年代終わりごろまでは、大学に行かなくてもそれなりの生活水準を保てる職につくことができる可能性が高かった。これは、工場労働者に対する需要があり、その多くで労働組合に高いレベルの賃金と福利厚生が守られていたからである。工場以外にも水道工、電気工のような様々な職種で組合が組織され賃金、福利厚生その他の既得権が保全されていた。 そのような雇用環境を脅かしたのがオイルショックであり、経済のグローバル化であり、経済環境の変化や技術革新に触発されて起きた様々な産業の再編成・再構築であったと思われる。たとえば、アメリカ人々を生活を支え経済の原動力であった製造業は、その多くが低賃金の国に生産拠点を移し、残った工場はロボットの導入などで求める労働力が肉体労働から知的労働に大きく変化したのである。結果的に、組合によって保障されていた賃金体系と福利厚生が大きく崩れ、より良い仕事、より良い報酬を得る為の競争が過当化し差別化要因の一つとして学歴の必要性が見直されてきたのだと思う。日本のように国民健康保険が一般化している国では想像しにくいことかもしれないが、アメリカでは良い待遇の条件の一つに充実した健康保険があげられる場合が多い。 もともと医療費が極端に高いうえ、健康保険のほとんどが民間保険会社によって提供されている実情では、各々の雇用主がどのような条件の保険に加入しているかによって、自己負担金額も異なれば、保険の対象となりうる治療、検査、薬も異なるのである。加入している健康保険に限りがあるため病気の発見が遅れた、治る病気も治らなかったという悲しい話を聞くのはそれほど珍しいことではない。それでも保険があればいい方で雇用されていても保険が無いという人たちも多くそれらの人々の悩みは深刻なものであろう。このことは中小の自営業者にとっては特に深刻な問題であり、アメリカの選挙で健康保険制度が大きな争点・公約として取上げられているのはこのためである。 

 もう一つの背景は、学費の高騰。 端的な比較で日本の慶応大学と同校と姉妹校のスタンフォード大学と比べると、慶応が年間100万円ちょっとであるのに対しスタンフォードは4万ドル、今の為替レートで換算すると320万円程度でおよそ3.2倍。国民一人当たりの平均GDPと比較すると、慶応が日本のそれに対し約28%、スタンフォードがアメリカのそれに対し約83%。公立は学校によって違うが、アメリカでトップ水準とされるカルフォルニア大学バークレー校は、州民に対する学費は年間1万3千ドル、州民以外の学生に課される学費は3万6千ドルである。それに対し東京大学は年間54万円。

学費の高さもさることながら、日米間の課税後の所得を差ということも見落とせない。一概にアメリカのほうが中所得者層の個人所得の実行税率が高く、たとえば年収1千万の子供が2名いる家庭の場合、日本の11.3%に対しアメリカは18.6%。その上に、健康保険の自己負担分、年金積み立てなどの費用もアメリカのほうが一概に高いことを考えると、同じ所得レベルでは一般的にアメリカの家庭の可処分所得のほうが低いことが多く、其の中から日本より明らかに高い学費を捻出するのは容易でない。これのため、大学に行くのに奨学金やローンに頼らざるをえない人々が大多数であるという現状があるのだと思う。 

ローンを組んで大学にいった人々が卒業後にその支払いに応じられるだけの報酬を得られる仕事に就けるかというと、そうでない場合のほうが多いので学生ローンが次のサブ・プライムになるのではという警告が発せられているわけである。学生ローンを払える人でも、可処分所得はそれだけ減るわけであり、アメリカ経済の足枷の一つともなっている。

付け加えだが、高額所得者に対する累進課税率の上限はアメリカのほうが日本よりだいぶ低く、そのうえ様々な控除により節税手段がありことから、高額所得者の実効税率は一概にアメリカのほうが更に低い。このような現実が、ウォール街占拠運動、1%対99%運動を引き起こし、共和党の候補者ロムニー氏の納税率が大統領選挙の争点になるのである。


個人所得課税の実効税率国際比較(財務省)




2012年8月21日火曜日

HIGA TV

去る、6月28日付けNew York Times Magazine (ニューヨークタイムスの日曜版についてくる小雑誌)に On You Tube, Amateur is the New Proという記事があった。いかにアマチュアのビデオ作家達(その多くはティーネージャー)がYouTubeから得る収入によって自活したり(記事によると推定年収10万ドル以上は、ざらだとか)、YouTubeでの名声がキャリアの登竜門となっているかということを書いた記事ですが、これはYouTubeがエンタテーメント・メディアとしての地位を確立してきたということの現れで、インターネットによるパラダイムシフトが進んでいることを示していると思おう。

数年前のことだが、『...ライアン・ヒガ(Ryan Higa)の親戚?って、よく聞かれるよ、ハハハ...』 といいながら娘たちが教えてくれた、nigahiga(ライアン・ヒガのYouTubeアカウント名)。いまや再生回数12億回以上、チャンネル登録者530万人以上のYouTubeセレブリティー。YouTube nigahiga チャンネルはこちら 本ブログ投稿のタイトル、HigaTVは、彼の新しいチャンネル名。

nigahigaの初期(2007年)のヒットビデオ『How to be Ninja』


最近(2012年)の作品



 最近では、2011年2月投稿したミュージックビデオが『♪~金曜日、金曜日、その次は土曜日~♪』という他愛なく、くだらないが一度聞いたら忘れらないキャッチーな歌詞で、数週間で一億七千万回近い再生回数をえるも、史上最悪のポップソングと酷評され、『...300万以上のdislikeと100万以上の中傷コメント...』(Wikipedia による) に耐えられずに一時はビデオを削除したレベッカ・ブラック(Rebecca Black、当時14歳)は、ポップスターへの道を歩み始めている。

2011年YouTube#1ビデオになった『Friday』。 Rebecca Black は、2011年に世界中でもっとも多くグーグルで検索された言葉にもなりました(Google Zeitgiestによる)


このような例は、いくつもあり始めた人たちがほとんど投資せず、宣伝もせず、人々が単に面白いといったことが有機的に広まりそれが億単位の回数でアクセスされているということがインターネットが媒体となったことによる大きな変化であろう。まさに、投稿者・ビデオ作者の個人の感性が見ている人たちの個々の感性で評価されているという個人の感性の世界である。個人が自由に自己の感性と想像力の表現をビデオという形で世界中に発表でき、また観客はリアルタイムで感想を使えられる媒体。その技術によってフィードバックやアクセスの数が瞬時に正確にわかるということがYouTubeでバイラルな(Viral: まるで ウィルスが人々に病気を感染させ一気に広めるように人気が出るということからきた表現)ビデオとセレブリティーが生まれることを促進しているのだと思う。

インターネットに代表されるIT革命は、農業革命、産業革命に次ぐ第3の人類の生き方の転機として位置られており、インターネット革命などはまだ始まったばかりといわれている。娘達を通して今のティネージャーの世代を見ていると、インターネットがラジオ、テレビそして印刷媒体を凌駕するほどに情報と娯楽の源となってきつつあることが実感される。そのインターネットは十数年前には考えも及ばなかったほどの大きな変化をポップカルチャーにひきおこし、ある意味では娯楽そのもの概念を変えていこうとしている。このような変化をわれわれの周りのいろいろな分野で引き起こしているのであるから、これからどんな風に世の中が変わってくるのか想像もつかない。まさに人間のアイディアと想像力の限界がIT革命の限界という感じとなるような気がする。

アクセス数が瞬時にわかるというな技術の裏には、誰がこれを見ているかを特定できるという技術もはらんであるから、このような変革と技術革新が世の中を全体主義のような悪い方向にむかっていくのに使われずに、個人の想像力と独立性を重んじ有機的に運営されていく世の中へ変わっていくことに使われることを望む限りである。

2012年6月21日木曜日

Spotify(スポティファイ)を使ってみて



Spotifyってなに? 
 
オンライン・オンディマンド・ミュージック・ストリーミング・サービスの代表格であるSpotifyが数ヶ月前からオーストリアでもサービス提供を開始したので我が家も利用しています。 このようなサービスは、基本的に定額の受信料(Subscription Fee)を払って、ライブラリーにある音楽ファイルを無制限に聞けるというサービス。 広告入りで制限つきの無料サービスを提供している場合もあります。 このようなサービスはこれからの音楽提供方法の主流の一つになりつつあるトレンドであり、日本には、まだ無いか一般的では無い・よく知られていない様なので情報を提供したいと思いこのブログ記事を書いています。  

 Spotifyは、2007年にスウェーデンで始まったサービス。欧州で急速に普及、現在はアメリカおよびオーストラリアにもサービスを拡張。提供するサービスは、Spotify Free (無料), Spotify Unlimited (米$4.99, £4.99、ないし€4.99), Spoify Premium(米$4.99, £4.99、ないし€4.99)の三通りのサービスがあり、1千万以上の会員数うち3百万人は有料会員との2012年5月に発表。主要なレコード会社と提携し1千5百万曲以上のミュージックライブラリーを誇る。

 それぞれのサービスを簡単に説明すると、Spotify Freeは、コマーシャルが入り聴ける曲に制限がある、Spotify Unlimitedは コマーシャル なし。 Spoify Premiumになると、 コマーシャル なし、聴ける曲の制限もなし、モービルデバイス(スマートフォーン、タブレットなど)にファイルの保存が可能、高品位ストリーミング(最高ビットレート320kpbs)、Spotifyをサポートしているミュージックシステム(Sonos、SqueezeBox、オンキョウ製品の海外モデルなど)へのストリーミングが可能。

 我が家では、最初はFreeサービスを試して、Sonos Wireless Network Music Systemでも聴けるようにPremium会員になった。(Sonos も 日本ではまだ発売されていない製品でこれからの家電オーディオの主流の一つになりうるであろうと思われる製品なので、その説明・解説をホームページにアップしました:ここをクリックして下さい(僕のHPのソノスのページが開きます。)

半年ほど使ってみて...  
 我が家では、ティーネージャーの娘たちにがメインのユーザーになっています。娘達は『世界中の音楽ある!』と大袈裟に感激して、僕が聞いたことが無いアーティストをよくかけています。世界中の音楽とまでは言いませんが、まず圧倒されるのが蔵書ならぬ蔵曲の多さ。他の音楽配信サービスと独占契約を結んでいるアーチストを除いてほとんどのアーチストが見つかります (ビートルズはApple iTunesが独占契約を持っているのでSpotifyでは配信されない。) ロック・ポップのみならず、ジャズ、クラシック、ワールドすべて、メジャーなレーベルから超マイナーなレーベルまでかなりのものが見つけられます。 

うちのiMacで見たスクリーン


  入会後試しにいろいろ探してみてみたのですが、たとえばVirna Lindt という1980年代前半にイギリスのCompact Organisationというインディ・レーベルからアルバムを2枚出したスウェーデン出身の女性歌手、しいて言えばニューウェーブあるいはシンセ・ポップのジャンルに入るでしょうか。90年代後半にはLTMというイギリスのインディ・レーベルからこれら2枚のアルバムがCD化されています。たまたま、大学時代にファーストアルバムを持っていて好きだったので、Spotifyで聴けるかどうか調べてみると、これがちゃんとあるのです。しかもセカンドアルバムや一曲だけはいいっているオムニバスアルバムも。 上の写真のようにJulie LondonもCD化されたレコーディングはほぼすべて見つけることができます。
 クラシックもかなりあり、今は絶版になっているレコーディングも結構探せますし、上の写真にあるようにマイナーレーベルのレコーディングもたくさん聴けます。 バイオリンを習っている次女が、モーツァルトのハフナーセレナーデの第四楽章ロンドを習っていたとき、娘に聞いてもらうためにその曲をを探したら、重複しないレコーディングが十数曲出てきました。 

セットアップ
 セットアップはとても簡単。Spotifyのサイトで入会手続きをして、パソコンやモービルデバイス にSpotifyのアプリをダウンロードしてインストールし、ログインするだけ。 Facebookとの統合化もすすんでいるので、Facebookのメンバーはそのユーザー名とパスワードでログインします。Sonosなどの音響装置で聞く場合は別途、SpotifyのサイトでデバイスIDというのをリクエストして、それがメールで送られてきますのでデバイスIDを使ってログイン。Sonosの場合は、Sonos ControllerアプリでSpotifyがサポートされいるので別のアプリやプラグインの必要はありません。 一度ログインすると、IDの検証が行われそれが終わると使用できます。
DailyFeed
Spotify アプリのアイコン
 ユーザーインターフェイスはとてもわかり易く、iTunesなどの音楽再生ソフトを使ったことがあるならばまったく問題ありません。 あとは、聴きたい曲やアルバムを選んで聴くだけ。

音質・使い勝手
前述のようにSpotifyのアプリは使い易く、使い勝手はとてもいいです。ただし、特にモービルデバイスやSonosでの曲のサーチがシンプル過ぎるのが良くもあり悪くもあります。 サーチは、アーチスト、アルバム、トラック別に詮索するのみ。Pop ・RockそしてJazzなどはまず問題ありません。 でもクラシックで探すとなるとちょっと工夫が必要になってきます。 たとえば、モーツアルトだとケッヘル番号を入れてトラックで探し、アルバム名を元にアルバムを探すというのが今のところ手っ取り早いです。 クラッシックも良く聴くので、演奏者、作曲家などを組み合わせてサーチできる詳細サーチの機能がつくといいなと思っています。

 音質は、MP3ファイルの再生と比べる限りにおいてはまったく遜色ありません。だたし、それなりの再生環境でALAC やAIFFファイルの再生と比べると、当然ながら明らかに違いがわかります。我が家の場合、ドックスピーカやマイクロコンポを多少良くした程度のSonos Systemでも、ちゃんと違いがわかります。結構いい音で再生される曲もあるので、これらはたぶんピットレートが高いと思われるのですが、配信されている曲のビットレートはわからないので確認のしようがありません。音の良し悪しと音楽を楽しめるかどうかということは別次元の話ですので誤解の無いようにお願いします。

 スマートフォンに音源を保存して持ち歩けることはとても便利です。我が家では、iPhoneに音楽をいれて車で聴きくのにこの機能をつかっています。iPodにMP3ファイルを入れて車で聴くのと同じ感覚です。ただし、DRM機能があって、留守番中の娘がSpotifyを家で聴いていたりすると車では聞けなくなります。これは早いもの勝ちのようで、先に車で聴き始めていたら逆に家では聞けません。

導入してよかったと思うこと・気になること
一番良かったのは、色いろんな音楽を試し聴きできること。たとえは、誰かのブログあるいは音楽雑誌を読んで聴いてみたいとおもったCDは大体Spotifyでアルバムを通して聴けますので、まず何度が聴いて好きかどうか判断し、CDがほしいかどうか考えてから買うことができます。今までだとアマゾンなどでさわりを試聴、運が良くてもYou Tubeかアーチストのホームページで数曲通して聴くことしかできず、まずアルバムを全曲の試聴はできませんでした。今はそれが簡単に家でできるので、無駄な散財がだいぶ減ったと思います。月間会費がCD一枚分より易いのでコスト・ベネフィットはかなり大きいと思います。あと、いろいろと音楽を使った『遊び』ができること。たいしことでは無いのですが、先日うちでタコス・パーティーをしたさいに、Spotifyでメキシコ・ラテン・ミュージックのプレーリストを作り、ランダム・プレーでBMGにしました。こんなことがとても気楽にすぐにできてしまいます。
 
 気になることは、あまりにも蔵曲が多すぎることもあって、どれを聴こうか決めるまでに時間がかかること。そうでなければ、さわりを聴いてすぐに他の曲・アーチストに移ってしまうこと。音楽を聴く姿勢が違ってきて考えさせられます。あと、ライナーノートや歌詞カードが無いこと。さらに気になることは、 FaceBook とのリンケージ。 これはパソコンで聴く際のことなのですが、Private Listeningを選択しておかないと、誰々はいま、何々を聴いていますと逐次FaceBookで報告されてしまいます。

その他雑考
 Spotifyにはいってから家人には『こんなにあるCDは、もういらないじゃないの~』と言われてしまいました。『いい音で聴くにはCDじゃないと~』と逃げましたが、技術が進歩しより高品位で配信を可能にしてくるとミュージック・ストリーミング・サービスがでてくると本当にほとんどの人々はCDを買わなくなるかもしれませんね。そうなると音楽供給方式がさらに大きく変わり、ゲーム・チェンジャーとまで言われたiTunesなどのファイル・ダウンロードの方式は過渡的なものであったという時代が来るかもしれません。動画だと、iTunesストアで1080pの画像と5.1サラウンドで映画をレンタル・購入することができるようになっていますから、高品位のミュージックストリーミングもそれほど先のことではないかもしれませんね。

このような時勢のなか、一過的な反動なのかもしれませんが、欧米ではアナログ盤が人気を取り戻してきているということももわかるような気もします。ながら聞きはストリーミングで、集中して聴くときはアナログ盤。ウィーンでも新品のアナログ盤を売る店がかなりあり、大きな量販店でも結構なスペースをとってアナログ盤を販売しています。 オーディオファイルとしては、いろいろと考えさせられることも多いですね。

  このブログ記事を書くにあたり、いろいろと調べてみるとSpotify のようなビジネスモデルは、2002年にMIT(マサチューセッツ工科大学)がその研究に基づいて音楽業界将来を提示した『Open Music Model (オープン・ミュージック・モデル)』の概念が具体化したものとのこと。10年前に このようサービスの台頭が示唆されていたとは、ちょっと驚きでした。その論文はこちらで読むことができます。  http://dspace.mit.edu/handle/1721.1/8438
 
  ソニーが同様の音楽配信サービスを英国ではすでに展開しており、日本でも近日開始するとの事、どうせなら2匹目のドジョウを狙わずに新境地を開拓してもらいたいというのが僕の日本人としての心情です。 日経ビジネスOnline:http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120614/233335/?ST=world&rt=nocnt

   
Spotify のホームページ(米国):http://www.spotify.com/us/