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2020年10月1日木曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景-その4(むすび)支持政党上の忠誠心・アンチ・トランプだけでバイデン氏は勝てるのか?



先日、第一回目の大統領候補公開討論が行われました(上の動画)。欧米の政治・時事評論家たちはこの討論会はいずれの候補者の支持率には大きな影響を持たないと評し、もともとトランプ氏支持者だった層はより支持が固まり、バイデン氏の支持者はよりその支持が強まったと述べています。また、討論会が終わった後のCBSニュースの調査によると、バイデン氏が勝ったとの回答は48%、トランプ氏は41%でした。10%は引き分けと回答したとのことで(日経新聞)評論家の分析を裏付けているとも言えます。『その1』で書いた、アメリカ大統領選挙の結果を左右するといわれている決まった支持政党がない層(Independents)に対しても大きな影響はなかったというのが大方の見方です。

これとは別に先週話題になったことが、レーガン政権下で大統領首席補左官及び財務省長官を務め、ブッシュ(父)政権下で国務長官を務めたアメリカ共和党の重鎮、ジェームス・ベーカー(James Baker)氏がTump大統領自身は支持しないが、共和党政権を守つためにトランプ大統領に投票すると述べたことです(WashingtonPost 紙)。共和党支持者間でも反トランプの意思を表す流れはあるようですが、アメリカでは(特に保守派)は支持政党にたいする忠誠心が強く・またそれが要求される国でもあると思います。政治家が帰属する政党を変えるということはよほどのことがない限り、その政治家の政治生命を終えるか短縮することにつながります。このことと『その2』で書いたようにもともと共和党支持者にはマスコミを信頼していない人が多いこともかさなってトランプ大統領が今から投票日までの間にどのような言動を行ってもその支持は揺るがないと考えて間違いないと思います。

そうなるとやはり、Indepdenents の層の動向がカギを握りますが、この層は一枚板ではなく、トランプ大統領は好ましくないからバイデン氏に投票するという人もいれば、トランプ氏個人の言動は気に入らないが政策・政見は自らの考えに相いるものがあるからトランプ大統領に投票、どちらも気に入らないから投票には消極的など様々な人々で成り立っています。ここで僕が気になるのはバイデン氏の政見・公約がはっきりと伝わってこないこと。氏からはアンチ・トランプのメッセージは強く伝わるものの、自分だったらどうする、自分が選ばれたら何がどう変わるのかということがあまり伝わってきません。Indepdenents の層になかにはおそらく、トランプ氏の言動は気に入らないがバイデン氏が大統領になったら何がどう変わるのか?ということで最終的に誰を支持するか決める人々も多いのではないかと思います。そのように考えると、アンチ・トランプを中心とした選挙戦略で勝てるのかという疑問もわいてきます。

今回のアメリカ大統領選挙はその結果いかんで世界が大きな転機を迎えうる重要な選挙になると思います。もしその転機を生む結果となれば、僕は地政学的にも大きなパラダイムシフトにつながっていくのではないかと考えています。僕にとってはとても気になる選挙です。


2020年9月30日水曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその3 勝つためには手段を選ばぬ選挙戦略

『困ったときのロジャー・ストーン』予告編 (ネットフリックス)

ネットフリックス製作のドキュメンタリー、『困ったときのロジャー・ストーン』。 これを観て、アメリカに長く住んでいた自分もとても驚きました。アメリカの選挙戦でこのように手段を選ばぬ戦略がまかり通っているとは思いもしませんでしたし、そのやり方を確立したと思われる中心人物がおおぴらにこのことを肯定しているからです。その中心人物とは、トランプ大統領は盟友で選挙参謀であったロジャー・ストーン氏。2016年大統領選挙に関わるロシア疑惑で実刑判決を受けるもトランプ大統領によって刑が免除された人物です。同じくロシア疑惑で実刑判決をうけたマナフォート元トランプ氏選対会長とは、80年代に設立され2010年までつづいた、アメリカ最強とまで言われたロビイスト会社の共同設立者の間柄です。彼らの選挙戦略の一つが陰謀論・陰謀論者たちの取り込みでした。


前回、アメリカ人のマスコミに対する不信感のマスコミの影響力が低いことを書きました。このようなマスコミに対する不信感が高い中、インターネット・SNSの普及とともに台頭してきたのが様々な陰謀論とその論者たちです。 とくによく報じられているが、Qアノン(ご参照:ニューズウィーク日本版)とインフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏 (ご参照:日経新聞)。 


もともとアメリカは個人主義が強くかつ人々の多様性をより容認する文化的な側面をもっています。これは日本やヨーロッパの国々とちがい、歴史が短くて主に移民で構成されたアメリカでは、国民共通の価値観・文化的思想などが希薄であるということで、アメリカ人の多くはそれぞれの拠り所を自ら見つけないといけないということが背景にあると思います。その拠り所を探す過程で、インターネットの浸透により、陰謀論・陰謀論者たちが容易に見いだされ、それを拠り所とし共鳴する人々が集まり、陰謀論サイトなどのヒット数、フォロアー数が爆発的に増え、それがまたマスコミ取り上げられ、さらに支持者が増えていくといった循環が続き政治的にも大きな影響力を持ちうる勢力となってきました。これらの陰謀論が極右的な思想に基づいていることに注目したロジャー・ストーン氏らの共和党の政治戦略家・顧問・選挙参謀らが選挙戦略に利用。陰謀論者たちも共和党有力者とパイプが自を正当化しメインストリームに進出、日の目を見る機会であるとの利害の一致の観もあって、トランプ大統領を支持・援護し、トランプ大統領も彼らの言い分を自らの言葉として発言することが増えたというのが現状です。その結果、荒唐無稽としか思えないような陰謀論にいわゆるメインストリームに属する人口層の信奉者が増加し2016年の選挙ではトランプ大統領当選に一役買った大きな支持勢力であったといわれています。

インフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏に関しては所在がはっきりとしているので、最近になって大手SNSプロバイダーなどからアカウントの削除などの処分を受けるようになってきいます。しかしその多くの信奉者たちや主宰者不明のQアノンとその信奉者たちは増え、トランプ支持のメッセージが匿名でネットで拡散されていくことは継続しており、今回の選挙でも引き続き、大きな影響力をお持つのか把握できていないということがあるかと思います。

このように勝つためには手段を選ばずという選挙戦略をとる陣営でもあるので、トランプ大統領が円滑な政権移行認めぬ構えと発言すれば、それは決してあり得ないことではないので大きな物議を醸しだすのです。

尚、下に添付した動画は、アメリカ公共放送サービスのインフォウォーズとその主宰者のアレックス・ジョーンズ氏に関するドキュメンタリー。英語ですか、観るに際しては地域限定の制限がないのでアメリカでなくとも全編を観ることができます。

(つづく)

『United States of Conspiracy』予告編 (PBSアメリカ公共放送サービス)


2020年9月29日火曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその2 アメリカ人のマスコミに対する不信感



今回はマスコミに関する不信感とネットによる様々な思想の拡散について書きます。

マスコミに対する信頼度 米ギャラップ社サイト(gallup.com)より引用

去年実施された米ギャラップ社の世論調査によると、59%のアメリカ人はマスコミ(新聞・ラジオ・テレビ)に対し不信感を持っているという結果がでています。上のグラフは、マスコミにニュースが『偏りなくすべてを、正確に、公平に伝える』といことに『とても信頼する』あるいは『概ね信頼する』との回答の割合のグラフです。この傾向は今にはじまったことではなく、同社サイトの詳細(https://news.gallup.com/poll/1663/Media-Use-Evaluation.aspx)をご覧いただくと分かりますが、調査が始まった1970年代をピークマスコミへの信頼度は下降しここ十年程はほぼ4割台となっています。


支持政党別のマスコミに対する信頼度 米ギャラップ社サイト(gallup.com)より引用

マスコミへの信頼度を回答者の支持政党別に見たのが上のグラフです。支持政党によってマスコミに対する信頼感の傾向がはっきりと異なっています。民主党支持者の7割程度はマスコミを信頼し、共和党の支持者は2割程度。トランプ大統領の任期が始まった2017以降、その乖離がより大きくなっていることがはっきりとわかります。決まった支持政党のない層(Independents)は四割前後です。

アメリカのマスコミは一部を除きその多くはよりリベラルで民主党支持の傾向がありますので、自らの観点が反映されていれば信頼できると評価しそうでなければ信頼できないと評価するのは当然の結果といえるでしょう。ということは、トランプ大統領を叩こうが、スキャンダルを暴露しようが、現大統領の支持層を揺るがすのは困難であるであろうということは想像がつくかと思います。ここで注目すべきは決まった支持政党のない層(Independents)もマスコミを信頼しているのは四割前後しかいないということです。つまり、マスコミの報道はSwing Stateの投票結果を左右しうる支持政党のない層(Independents)への影響も低いと考えらることです。したがって、マスコミの報道はアメリカ国民の考えに影響を及ぼすということは日本など比べるとだいぶ低いと言わざるを得ないでしょう。


マスコミ離れにさらに拍車をかけていると思われるのが、平均的に低いアメリカ成人の読解力かと思われます。OECD加盟国等24か国・地域(日、米、英、仏、独、韓、豪、加、フィンランド等 )が参加し、16歳~65歳までの男女個人を対象として実施された国際成人力調査(PIAAC)によると、アメリカ人で読解力が弱いと評価されたのは全体の21.7% それに日本は6.1%です(レベル1以下+欠損、5段階評価で最も読解力があるのはレベル5)。この結果をもとにアメリカ合衆国教育省はアメリカの成人(18歳以上)のおよそ4千3百万人強の読解力が弱いことにつながると分析しています。アメリカ合衆国国勢調査局によるとアメリカ成人はおよそ2億5千5百万人とされていますから全成人のおよそ17%の読解力は弱いことになります。このことからは、多くのアメリカ国民がニュースなどの時事情報を得るのはネット配信を含む動画・ラジオに頼る傾向があることがうかがえ時事情報ソースの多様化のなか、自らが信じたいもの・考えにあるものを真実・事実として受け入れる要素となっていっているのだと思います。



(つづく)

2020年9月28日月曜日

トランプ大統領の再選がありうる背景ーその1 間接選挙制度


Wikipedia Commons より引用

マスコミの報道だと世論調査ではバイデン氏支持が8~9%のリードをとり、トランプ大統領に関する様々な批判と暴露の報道が続き再選はかなり難しいのかなというのが多くの人の読みかと思われます。しかし、2016年のアメリカ大統領選挙はクリントン氏勝利という大勢の読みに反する結果でしたし、もしかする今回の選挙もそのようなことが起こり得るかもしれません。僕はあまり低くない確率でトランプ大統領再選はありうるのではないかと考えています。アメリカに長く住んでいた者の観点からそうなりうる背景を書いてみました。書いていくと長くなったので数回に分けて投稿しますが、読んでいただければ幸いです。

まずは、選挙結果に大きな影響を持つ、アメリカの大統領選が間接選挙制度であるということとその特殊性について書きます。 


『選挙人(Elector)』数 割当て Wikipedia Commonsより引用  


• アメリカ大統領選挙は州ごとに、特定の正副大統領候補ペアを支持する『選挙人(Elector)』を選び、その選挙人が選挙人集会で大統領及び副大統領を選出するという、間接選挙という形で行われます。建国当時、広大な国土を持つアメリカでは現実的に直接選挙を行えなかったということに由来しています。もちろん現在においては直接選挙に替えることは実務的には問題ありません。しかし間接選挙制度を続けることが、アメリカ2大政党、それぞれの州などの政治的利権を保つという利害関係が一致していることもあり、選挙制度を変更するという動きはでてきていません。国民もこれが当たり前と思っているところもあり、変えようという意見はほとんど上がってきません。

• 『選挙人(Elector)』総数は538人で州それぞれの人口に応じて人数が割り当てられます。

一概には投票者は支持する正副大統領候補ペアに投票、最も多く得票した候補がその州の選挙人全員を獲得するという勝者総取りという形で州ごとの選挙人が決まり、選ばれた選挙人はすべて最多得票を得た正副大統領候補ペアの支持者のみということとなります。例外はメインとネブラスカの二つの州のみ。

国の大統領を選ぶ選挙なのですが、厳密には州単位の選挙であり、その実施は州に委ねらているため、実施方法、使用される集計機器・システムなど州ごとに大きく異なることも珍しくはありません。

アメリカには日本のような住民登録という制度がないこともあり、投票するには有権者が自ら、居住する州で有権者登録(「Voter Registration」)を行なってからでないと投票ができません。このため貧困地域・下層階級の住む地域では登録を受け付ける自治体・公官庁のインフラも劣っているので、それらの地域では人口に対し登録済みの有権者数が少ないという格差が生じることが往々にしてあります。従って選挙戦略の一つに自らが有利となりそうな地域・階級などの対象に有権者登録を促し、サポートするということも行われます。

アメリカの州のほとんどは、それぞれの人口統計的属性・政治文化的属性などから歴史・伝統的に民主党支持という州と共和党支持という州にわかれています。このため実際の大統領選の勝敗は、「Swing State」という歴史的に支持政党が変わることが多く、しかも、選挙人の割り当て数の大きな州の結果に委ねられることになります。これらの州がなぜ「Swing」するかというと決まった支持政党のない層(Independents、概して党別で行われる候補者選びの予備選には投票をしない層)の人口が多いということが大きな要因ですが、それ以外にも人口の流動性が高い、それぞれの支持政党への忠誠心よりも自己判断のほうが強い傾向の人々が多く住んでいるということもよういんとしてあるようです。

ただし、一筋縄ではいかないのはこれら「Swing State」州すべてが常に選挙の「Battle Ground State」(接戦・激戦州 つまり前回選挙比べで支持政党が変わる可能性があり得る州)となるかというとそうではないということです。アメリカは、人口移動・経済情勢の変化といった移り変わりが特に激しい国なので、どこが激戦州になるかは、各々の年、さらには分析を行っている人・機関によってある程度異なってきます。一般的には10州前後、今年はペンシルバニア、ウィスコンシン、フロリダ、ミシガン、アリゾナ、ノースカロライナ、ミネソタ、ジョージア、テキサス、オハイオなどがよくあげられています。その中でもとくに揺れている(選挙結果の予想困難・最も激戦)と多くの分析に上がっているのいるのがペンシルバニア、ウィスコンシン、フロリダ、ミシガン、アリゾナ、ノースカロライナです。

このような背景・選挙制度なので、2016年大統領選挙のように、全国レベルでは得票数が少ない候補が勝利を収めるということが起こり得るのです。ごく一部の州の結果が全国レベルでも結果により大きく影響する傾向があるので、激戦州をより正確に見定め、どのように選挙を争うかということが選挙の勝敗を決定する大きな要素ともなり、選挙戦略を候補者と主に司る参謀役のCampaign Manageの力量が大きく問われるわけです。

(つづく)

<参照リンク>

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53798070



2020年6月19日金曜日

ジョージ・フロイド氏殺害と人種差別抗議行動

By Lorie Shaull - https://www.flickr.com/photos/number7cloud/49959004213/, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90963059

ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイド氏が警察官に過度な拘束手段により死亡した事件(その後、当該警察官は殺人罪で起訴、こちら)に端を発し、世界中に広がった反人種差別の抗議行動と暴動。



この事件でまず頭に浮かんだのは、アメリカ在住の時に見た二つの映画。スパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』(原題: Do the right thing、1989、予告編上)と第78回アカデミー賞作品賞受賞作品 『クラッシュ』(原題:Crash、2004、予告編下)、そして、1991年のロドニー・キング事件と事件の判決に対する抗議行動と暴動(こちら)。そして思ったのは、結局、何も変わっていないじゃないかという失望感。

アフリカで捕らえられ、奴隷商人の商品としてアメリカの(主に)農場主に売るために連れてこられた人々の子孫。奴隷解放問題が主な引き金となりアメリカを2分し75万人の死者を出したとされる南北戦争、リンカーン大統領による奴隷解放宣言と彼が押し通した奴隷禁止を定める米国憲法第13修正、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が率いた公民権運動の結果1964年に制定された人種差別を禁ずる公民権法など、アメリカではその歴史上人種差別を無くすために、時としては多くの犠牲を伴う、多大な努力がなされ、法制度が整えられてきました。

しかし、法制度改革はあくまでも建前であって、アメリカでの黒人に対する差別は無くならず、彼らの生活も良くならなかった。世代を重ねても生活レベルは向上するどころか低下し、最近ではグローバリゼーション、インターネットなどによる産業構造の変革により、もともとアメリカの中流階級を支えた、いわゆるブルカラーの仕事は大幅に現象したと、直近ではコロナによる大量解雇でさらに大多数の黒人が失業。絶望と不安と不満が満ち溢れて今までに無いぐらいに大きく膨らんできたとき、ジョージ・フロイド氏殺害が起爆剤となり史上もっとも大きく広範囲な抗議行動と暴動につながった。人種差別は3世紀以上、何世代にもわたって黒人の人たちを苦しめてきた、根深い問題。それに昨今の大幅な所得・資産格差の問題、若者たちの高い失業率などの問題が抗議行動を大きく広げた要因だと思う。

ここで紹介した2本の映画以外にも、『カラーパープル(1985)』、『大統領の執事の涙(原題: The Butler(2013)』、『グローリー/明日への行進(原題: Selma、2014)』、『13th -憲法修正第13条-(2016)』、『グリーンブック (2018) 』とアメリカの黒人に対する人種差別が描かれている映画は数に暇がありません。それらがすべて現実を反映していると言うことはとてもかなしことだと思います。

今回の一連の事件が、人種差別問題の真の解決につながる大きな契機となっていくことを望む限りです。




2020年3月20日金曜日

オーストリアのCOVID-19状況 - 3月20日

旧市街の中心にあるHerrengasse

オーストリアは、3月16日月曜日からより厳しいCOVID-19 対策を講じており、食料品店・薬局・銀行などの生活に不可欠と指定されている一部の除く店舗の営業停止、外出制限、出入国制限、イベントなどの中止の処置を当初の4月3日までから十日間延長し13日までにすることが先ほど発表されました。

ウィーン一の目ぬき通り、Kärntner Straße(写真上)とGraben (写真下)も人が疎ら
僕は水曜日まで出勤していましたが、オフィスでしか出来ない当面必要な業務もほぼ片付けたので昨日から在宅勤務。このページの写真は出勤・帰宅時に撮影したものです。

いつもなら人で埋まっているGrabenのカフェ

この数日は、快晴。気温も20度近くまで上がり、ウィーンの桜は満開です。




2020年3月13日金曜日

オーストリアのCOVID-19状況 - 3月13日

https://www.nature.com/articles/d41586-020-00190-6 より引用

こちらでの状況は刻々と急激に変化しています。オフィスは来週から一部を除き全面的に在宅勤務。 今日、さらにオーストリア政府の対策強化が示されて、来週から、食料品店、薬局、銀行、ガソリンスタンドなど一部を除く、商店・商業施設が閉店。学校もすべて休校。レストラン、カフェは15時まで営業可能。スイス・スペイン・フランスからのフライトをすべてキャンセル。感染が最も集中しているチロル地方の封鎖などです。


今、最も危惧されているのは重症患者のための集中治療室・人工呼吸器などの設備が足りなくなることのようです。イタリアで死亡患者が急激に増加しているのは、それらの設備が足らなく、医学的には助けらたであろう患者さんを充分に治療できなくなっているという現状に拠るとことであるようです。そのような状況で亡くなられた患者さんとそのご家族はさぞ無念であろうと察します。

日本人のマスコミ・ネットでは、日本の対応のまずさを批判する記事・書き込みも多いですが、海外から見ていると、日本が行ってきたことを海外各国は追従しているようにも見えます。観客無しでスポーツ試合を行うこと、学校を休校にしたこと、イベントの中止などなどです。

人口一億2千6百万の日本では国内感染者が668人ですが、八百八十万人のオーストリアでは(3月12日現在)ですが、442人。日本の対応は功を奏しているといえると思います。

2020年3月9日月曜日

COVID19

Wikipedia Commons credit: CDC/Dr. Fred Murphy (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Coronaviruses_004_lores.jpg / PD-USGov-HHS-CDC)

欧州でも大きな問題となっているコロナウィルス。COVID-19(Corona Virus Disease 2019)というのが正式名称です。昨夜の時点でのオーストリアの確定症例は102名です。
職場の緊急時対策委員会の一員でもあるので、対策に結構時間を割かれています。

こういうことが起きてみて、一番難しいと思うことは、人に対する対応です。どのようにして、情報疎通の透明化保ち、かつ、人々がパニックに陥るのを避けるかと言う事です。どのような文面と形で最新の展開を伝えるかで長時間議論し伝えても、多くの人たちは、自らで解釈・判断を下し、最も信じたいという思う情報を元に行動を起こす傾向がみられます。今わかっていることが、後々実は正確ではなかったことがあるかもしれないと思う人も多いようです。実際に状況は刻々と変化しています。僕の職場は科学者(自然科学の分野で博士号を持つ人達)や修士号以上を取得した高学歴者が多く働いているのですが、それでもこの傾向は顕著です。

あと興味深いのは、個人的な知り合いのお医者さんの間でも、それぞれ意見が異なり、『からだの免疫力・抵抗力を保ってさえいれば良い』という方もいれば、『深刻さが充分に把握されていない。身の回りの消毒を怠るべきではない』という方もいて、意見が一枚岩ではありません。

オーストリアにはもともとマスクをするという習慣が無い上に、犯罪・テロを防止する目的の覆面禁止法が3年ほど前に施行されており、医師の診断書がある場合を除きマスクの着用が禁止されているので、ここの人々がマスクを買いに走るということがありませんが、手等の消毒液は早々と店頭から消えてしまい、病院の在庫の不足が危惧されています。

ウィーンでは、2~3の学校が閉鎖されたことと、大きな学会の自主延期、中国、イラン、韓国、イタリア北部などの感染地区への直行航空便、列車、バス便の運休などの対策が講じられています。今のところ街に大きな変化が起きているという印象は受けません。コンサート・オペラなどは通常通り行われており、観客もそれほど減ったという印象は受けません。レストランなどもちょっと人が減ったかなというぐらいで普通に営業しています。しかし、街を歩くと、いつもは観光客で溢れかえっている旧市街も、明らかに人出が減っており、特に東洋人はほとんど見かけなくなりました。


まとまりの無い文章になってしまいましたが、僕の目からみた今のウィーンの様子はこんな感じです。


2016年11月9日水曜日

アメリカの大統領選挙 - トランプ氏の勝利で考えた


トランプ氏の勝利は、イギリスのEU離脱に続いて予期せぬ投票結果になった。

私見を述べると、この選挙は、クリントン対トランプというより、エスタブリッシュメント対アンチ・エスブリッシュメント あるいは「改革」対「現状拡大路線」として見ると理解できる結果かと思われる。

数々の暴言、脱税疑惑・女性問題といったスキャンダルにもかかわらずトランプ氏が勝利を収めたということは、いかにアメリカ国民の多くが抜本的な改革・変化を求めているかということの表れだと思う。要するに、米国政界にしがらみも無く、経済的に誰にも頼る必要のない財力があり、選挙戦で従来の政治家にとってのタブーをことごとく破って勝ち抜いたトランプ氏を多くの米国民は強烈なアンチ・エスブリッシュメント候補だと捕らえ、改革の旗手として選んだのであろう。米国議会の上院・下院とも議席の過半数を氏の政党である共和党が獲得したというは、トランプ政権の政策が実行される下地が出来たということであり、大統領選の結果と同じかそれ以上にこれからのアメリカの動きに大きな含意を持つことであると思う。

数年前にこのブログでも書いたが(こちら)この背景にはアメリカにおける、富の格差の拡大とそれに伴う、中産階級の消失。限定的である分野では完全に欠落している社会保障制度、高等教育費の高騰などにより、中・下位層の人々にとって、自らあるい次世代の経済的状況を改善させうるであろう機会損失による希望の喪失があると思う。

さらには、「Audacity to Hope(大いなる希望を抱く)」という理想を掲げ、国民から現状改革を期待されて初のアフリカ系アメリカ人として大統領に選ばれたオバマ氏の政権8年間の結果に対する失望もあったのではないかと思う。この間、米議会は共和党主導でことごとくオバマ政権の政策実行を阻止したということはもちろん周知のことではあり、その結果、国民のアンチ・エスブリッシュメント感情は高まり、トランプ氏が共和党候補として選ばれた主な要因のひとつであると考える。昨日、ドイツ国際公共放送(Deutsche Welle)のニュースを見ていたら、オバマ政権下では富の格差が拡大したとアメリカの過去8年のジニ係数推移をもとに報道していた。

クリントン氏、共和党の有力者、マスコミ、有識者などがトランプ氏や氏の支持者を軽視・侮辱するような言動は、トランプ氏をサポートする人々にとっては自らにむけて発せされた侮辱であり、ある意味では民主主義化における正当なプロセスを批判し民意を無視・軽視したと考える人々がいたとしても不思議ではない。

格差の拡大により、一部の上位層の人々を除き多くの人々が生活の質(Quality of Life)が改善するどころか逆に下がってきているということに痺れを切らしているという現象はアメリカ特有のものではなく、ヨーロッパ、新興国、途上国でも顕著になってきていることである。 このような状況の中、民主主義の正当なプロセスの得てポピュリストが台頭し権力を手中に収めている世界的な傾向は、過去の歴史を振り返ると世の中が乱れる時代に突入している過程との類似点も多く、憂うものである。

ここ数年、多くの著名経済学者が格差による負の影響を明らかにし警告を鳴らしているが、それらを真摯に受け止め、格差拡大により苦悩を強いられている人々の現状を理解し、それらを抜本的に解決していけるような指導者・体制が生まれてくることが理想なのであろう。世界の一市民として、二人の娘の親として、これからの世の中が歴史の轍を踏まずに破壊につながらない改革が進むことを望み祈らざるをえない。


御参考:『ピケティ、大御所2人と「格差」を語る』:http://toyokeizai.net/articles/-/62725




2016年7月2日土曜日

オーストリア大統領選のやり直し!


先日、『オーストリアで危うくネオナチとの関係があるとされる極右政党の候補が大統領に当選しそうなったり...』 と書きましたが、何と昨日 (7月1日)オーストリアの憲法裁判所が5月に行われた大統領選の開票手続きに不備があったとして、その結果を無効とし大統領選挙をのやり直すように命ずる判断を下しました。異例のことのようです。極右政党の自由党は、反難民・EU離脱を主張しており、英国のEU離脱の国民投票の結果が自由党の支持を増やすのではないかと懸念する人たちも多いようです。

今年行われた大統領選挙では、どの候補者も過半数をとれず、中道候補が敗退し、上位2候補のリベラル左派と極右の一騎打ちの決選投票の末、0.6%という僅かな票差でリベラル候補当選下という経緯があります。

その結果、オーストリアは人口850万人弱の小さな国で、アメリカと違い大統領の実権はかなり制限されているのですが、今年の大統領選挙はヨーローッパの政局を占う試金石と評されていました。再投票は9〜10月の間に行われるとのこと。同国の政局不安定に繋がらないと良いのですが...

本件に関する日経新聞の記事:
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H9F_R00C16A7FF1000/

2016年6月29日水曜日

英国のEU離脱!

今週のウィーンは昨日まで20度前半の気温で先週から連日続いていた30度をこえる夏の暑さから一息ついたところですが、今日からまた夏の暑さに戻りました。例年より早く突然夏が訪れた感じです。

ヨーロッパは、英国のEU離脱の国民投票結果の話題で持ちきりです。オーストリアで危うくネオナチとの関係があるとされる極右政党の候補が大統領に当選しそうなったり、アメリカでトランプ旋風が起こったり、フランスやドイツでの極右政党の台頭など、反既存政党・政権の国民感情感情が高まっていることの反映なのではないかと思っています。これも著名経済学者たちがそのリスクを警告しているより極端に偏りつつある富の分配がその大きな要因のひとつとなっているのではないでしょうか? 

英国が実際にEU離脱をすることが確定すると世界経済・政治に及ぼす影響は計り知れません。おそらく想像以上に悪い方向に行くのではないかと危惧しています。イギリスの国民投票は法的拘束力は持たないようなので、自らの政治生命をかけても客観的な立場からの国益・世界の利益を優先し、すくなくとも結果を再考させられる方向に持っていけるリーダーがイギリスにいるといいのですが...。

2015年9月30日水曜日

ウィーン・フィル主催の難民救済チャリティーコンサート




ウィーンは日もだんだんと短くなり、肌寒く感じるようになってきました。9月のウィーンはミュージック・シーズンの始まりでもあります。

一昨晩(9月28日)は、ウィーン・フィル主催・オーストリア大統領共催のアフリカ・中近東からの難民救済チャリティーコンサートに行ってきました。会場はコンツェルト・ハウス大ホール。指揮はChristoph Eschenbach(クリストフ・エッシャンバッハ)。ソプラノはElisabeth Kulmanプログラムは:

Wolfgang Amadeus Mozart:Symphony in G minor, K. 550 (1788)
Richard Wagner: Five poems by Mathilde Wesendonck for a female voice and piano "Wesendonck-Lieder" (Arrangement for Soprano and Orchestra: Felix Mottl) (1857-1858)
Wolfgang Amadeus Mozart: Symphony in C major K 551 "Jupiter Symphony" (1788)

中近東やアフリカからの難民流入の問題はヨーロッパでは我々の想像以上にとても大きな問題。大国の軍事・政治介入、宗教的対立という大儀、開発途上の経済と貧困、さまざまな要因が重なって引き起こされて終わりの見えない内戦とテロリズムから着の身着のまま命がけで逃げてきた難民の人々。ナチスドイツや元ユーゴスラビア諸国の民族排斥の歴史を教訓とし人道的な立場から難民を被害者として手厚く保護しようする大きな動き。それに対し、おそらく、過去の民族移動の歴史になぞらえるのか、ヨーロッパの文化・民族性を変えていく事象であると危惧する人たちも多いようで、ヨーロッパにおける政治の右傾化に拍車をかけている。まさに欧州の人々を分断するきっかけになりかねない、第二次世界大戦後最大の危機的状況に発展しかねない問題である。EU内では旧共産圏の東欧諸国が難民受け入れに難色を示しているが、同じくもと共産圏でEUに加盟していない(できない)旧ユーゴスラビア諸国からこの機に乗っかって西欧諸国に入国する多くの経済難民の存在がさらにヨーロッパの人々の民族的感情の問題を複雑にしているということもまた大きな問題となっている。

さて、チケットの売り上げは全額難民救済団体に寄付されるというこのチャリティーコンサート、チケットは普通より高めで、しかもたった2週間ほど前に発表されたにもかかわらず、ホールはほぼ満員。このような催しを即座に決めて、開催し、多くの観客を呼び集めることのできるウィーン・フィルの偉大さに関心させられました。