一昨日(11月3日水曜日)は、妻と二人でJulian Rachlin(ジュリアン・ラクリン)のリサイタルに行ってきました。
数年前にジョシュア・ベルのリサイタルに来ていた職場の同僚とジョシュアはよかったねと話したら、彼女曰く『…よかったけどジュリアン・ラクリンのほうがもっと素晴らしくて最高…』。 それなら是非聴いてみたいと思っていたのですが、ウィーンでは協奏曲のソリストとしてか室内楽の一員としてのコンサートしかなくて、どうせだったらソロ・リサイタルで聴きたいと思っていたのですが、やっとその希望が叶いました。
会場は楽友協会大ホール。ピアノはデニス・マツーエフ(Denis Matsuev)。 プログラムは以下の通り。第一部はビオラ、第2部はバイオリンでした:
Schumann:Märchenbilder. Vier Stücke für Klavier und Viola op. 113 (「おとぎの絵本」ビオラとピアノ版)
Brahms:Sonate für Klavier und Viola Es-Dur, op. 120/2 (ビオラ・ソナタ第2番 変ホ長調)
Debussy:Sonate für Violine und Klavier (ヴァイオリン・ソナタ ト短調)
Franck:Sonate für Klavier und Violine A-Dur (ヴァイオリン・ソナタ イ長調)
期待と想像をはるかに超えた素晴らしい演奏でした。それぞれの曲に対しの新鮮なアプローチ、かといって、自らのスタイルを押し付ける出なくそれぞれの作曲家のスタイル、曲の良さに脚光あて、他の著名演奏家があまりに表に出さなかったような隠れた美しさが引き出されたりと、聴きなれた曲がこんな風にも聴こえるのかと発見も多かったリサイタルでした。ビオラとバイオリンのトーンも甘美でつややか。テクニックは、今までライブで聴いた演奏家の中では一番すごかったのではないかと思いました。
ピアノのマツーエフも素晴らしく二人の息もピッタリ、単なる伴奏の域にとどまらず
、各々が互角に曲の中で自らの役割を熟知し、それぞれを刺激しあい相乗効果で曲の音楽性を高めていっていたと思います。曲の原題でバイオリン・ビオラとピアノのためのソナタというのはこういうことなんだということをはっきりとわかられてくれたかのような共演でした。
アンコールは、僕の大好きなサン・サーンスの「序奏とロンドカプリチオーソ」、クライスラーの「愛の悲しみ」・「愛の喜び」、そしてワックスマンの「カルメン幻想曲」。コンサートの第3部とでも言ってもよいほどの演目。「序奏とロンドカプリチオーソ」は彼の超絶テクニックをショーケースするかのような演奏。何度聴いたかわからない「愛の悲しみ」は、なぜわからないけど聴いていて思わず涙が流れ出してきそうになるも、「愛の喜び」で有頂天なハッピーさに一転のマジカルな演奏。 「カルメン幻想曲」では、ピアノのイントロが始まると共に客席から手拍子で会場が沸きました。妻も2人もすっかり、ジュリアンのファンとなり帰途につきました。
ジュリアン・ラクリン公式HP:
http://www.julianrachlin.com/
五嶋みどりによるバイオリン器楽曲作品解説のページ、このリサイタルで演奏されたバイオリン器楽曲のほとんどの解説が載っています。著名演奏家による作品解説はあまりないかと思いますのでぜひご覧ください。曲を聴く楽しみが増えるかと思いす。 :
http://www.gotomidori.com/program-notes/?lang=ja