2015年3月29日日曜日

エレーヌ・グリモー リサイタル ・Hélène Grimaud Recital@Wien Musikverein




さる月曜日 (3月23日)に、妻とHélène Grimaud(エレーヌ・グリモー)のリサイタルに行ってきました。会場は楽友協会大ホール。プログラムは以下の通り:

Berio: Wasserklavier
Takemitsu: Rain Tree Sketch II
Fauré: Barcarolle 5
Ravel: Jeux d’eaux
Albéniz: Almeria
Liszt: Les jeux d’eau à la Villa d’Este
Janáček: In the mists 1
Debussy: La cathédrale engloutie
Brahms: Sonata no. 2

グリモーを聴くのは2度目。前回は聴いている間がそれなりに面白かったのですが、後に残らないし、ちょっとピンと来ませんでした。でも、とても人気のピアニストなのでもう一度聴いてみてみたいと思い、今回のリサイタルに足を運んだ次第。彼女は曲を素材として自分の世界を創り上げていくタイプの典型だと思います。で、今回もやはりちょっとピンと来ませんでした。現代曲はともかく、ブラームスのピアノソナタはまるでリストの超絶技巧練習曲でも弾いているような感じ。インパクトはありますが、僕には違和感の方が大きかったでです。妻にはこれだったら一人で行ってくれても良かったと言われました。好き嫌いが別れる演奏家なのでしょう。

ちなみに、前回のリサイタルに関するブログはこちらです。

エレーヌ・グリモーの公式HP:http://helenegrimaud.com

2015年3月26日木曜日

ピーター・ウィスペルウェイ 「バッハ無伴奏チェロ組曲」 リサイタル・Pieter Wispelwey Concert "6 Bach Solo Cello Suites"



先週末の土曜日(3月21日)に妻と、Pieter Wispelwey (ピーター・ウィスペルウェイ)のリサイタルに行ってきました。場所は、ウィーン・コンツエルトハウスのモーツアルト・サール。プログラムは、JSバッハ、無伴奏チェロソナタ全曲。彼のリサイタルは、2度目。前回は3年ほど前で、そのときは古楽器による器楽曲演奏のコンサートシリーズで主にベートーベンのチェロソナタが演目でした。

もう、十年以上も前のことですが、バッハの無伴奏チェロソナタにはまって多くに演奏家のレコーディングを聴き漁ったことがありました。そのときにもっとも気に入ったのが彼の2度目のレコーディング。バロック・チェロによるものでした。いまでも、この曲を聴くときにはまずこのCDをかけます。そういうこともあって、とても楽しみでリサイタルに出かけました。ちなみに彼は2012年にこの組曲3度目の録音のCDを出しています。

今回はピリオド楽器の設定ではなくモダン楽器の設定。一曲目の出だしからまったく違う演奏。今まで聴いたことのあるこの組曲の弾き方とはまったく違うものでした。だからといって奇を衒って違いを出すというのもではありません。英語のdeliberateという言葉が頭に浮かびました。日本語たどぴったりくるニュウアンスを持つ言葉を見つけれていませんが、慎重で思慮深い演奏 という感じかと思います。器楽演奏家には曲を素材として自分の世界を創り上げていくタイプとその曲に委ねた作曲家の意図と想像しうるその時代の演奏スタイルを尊重した自らの解釈を表現していこうとするタイプとに大別されるかと思いますが、この日の演奏は紛れも無く後者のものでした。自分と楽器と曲との対話を通じて、今は亡き歴史的大作曲家に話かけようとしているかのように思えた感動的な演奏でした。この組曲はウィスペルウェイにとっての生き様・ライフワークなのでしょう。

通常のコンサートより一時間半早く始まり、2つの休憩を挟んだ長いリサイタルでしたが、妻と二人、胸に熱いものを感じながら帰途につきました。


ピーター・ウィスペルウェイの公式サイト:http://pieterwispelwey.com/


2015年3月20日金曜日

先週末 その2:Geschichten aus dem Wiener Wald (ウィーンの森の物語)@ Theater an der Wien



観客の拍手に答える HK Guber氏(中央)

3月14日土曜日の夜は、妻とオペラ。シーズン・チケット=プレミア(初日)シリーズの一環で  Geschichten aus dem Wiener Wald (ウィーンの森の物語) HK(Heinz Karl)Gruber (HKグルーバー)作曲の新作で氏自らの指揮。グルバー氏はウィーン生まれのマルチ・アーチストで作曲家のみならず歌手、俳優、ベースプレヤー、指揮者、舞台・映画監督としても活躍中。1931年に書かれベルリンで上演され成功を収めた、Ödön von Horváth(エデン・フォン・ホルヴァート)の同名戯曲をオペラ化したもの。ウィーンの庶民の生活を風刺したこの劇は、当地では否定的に受け止められたらしい。 

初演の作品なのでまったく予備知識も無かったのだが、HK Guber氏の作品はコンサートで何度か聴いたことがあったので、前衛的では無いであろうと思いつつも、現代の作曲家であるのでどこまでヘンテコになるかな?と覚悟はしていたが思ってよりもフツーな感じのオペラでした。出演者もかなり名が通った歌手が多く、歌も演技もすばらしかったので面白く楽しめました。

オーケストラと主なキャストは以下の通り:

指揮:HK Gruber
Marianne: Ilse Eerens
Alfred: Daniel Schmutzhard
Oskar: Jörg Schneider
Valerie: Angelika Kirchschlager
Zauberkönig: Albert Pesendorfer
母親:Anke Vondung
祖母:Anja Silja

HK Gruber に関して:http://tower.jp/artist/708500/HK-Gruber

エデン・フォン・ホルヴァートに関して:http://www.surugadai.ac.jp/sogo/media/bulletin/Bunjo07-01_MIWA.pdf

2015年3月17日火曜日

先週末 その1:ズービン・メータ指揮ウィーン・フィルコンサート /Zubin Mehta conducts Vienna Philharmonic (追加・修正あり)


その日の朝、知り合いから連絡があり、急に連れが行けなくなったからと、コンサートのお誘い。 メータ指揮のウィーンフィル、場所は楽友協会大ホール。3月13日の金曜日だけどラッキーでした。プログラムは以下のとおり:

György Ligeti 「Atmosphères」 
Joseph Marx  「Alt-Wiener Serenaden (Old Vienna Serenades) 」
Anton Bruckner 「Symphony No. 9 in D minor, WAB 109」

一曲目は正に現代音楽というイメージの曲で、トランペットに息をフーフーと吹き込んで風の音といった感じの短い曲。2曲目はちょっと耳直しでウィーンの伝統的なメロディーを使った作品でちょっと今の映画音楽的。休憩時間の後はブルックナー。映画に例えると「風と共に去りぬ」のような壮大スペクタル大河ドラマといった感じかな~。 前に書いたようにブルックナーはちょっと苦手感があるのでこんな感想になってしまいましたが、ライブで聴くのは悪くありません。

僕にとっては気合を入れて聴くというプログラムでしたが、さすがメータとウィーンフィル。すばらしい演奏でした。

音が良いことで有名な楽友協会大ホールですが、ホールが比較的小さいためか大編成のオーケストラでダイナミックレンジが広い近代の交響曲を演奏する際に、フォルテシモで音が飽和状態になって割れて聴こえることが時々あります。このホールに慣れてないオーケストラと指揮者の組み合わせの場合が多いのですが、ウィーン・フィルでもエキサイタブルな指揮者だったりすると盛り上がってしまってそうなった場合もありました(それはそれで聴いていて面白いのですが...)今回はぎりぎりのまで音量は上がるもののその一線を越えることはなく、さすがと思ったしだいです。

(続く)




2015年3月9日月曜日

映画の週末:「Back to the Future」30周年記念上映会 と「Selma」

引用/Source: http://www.gartenbaukino.at 
先週末は映画を2本見てきました。まず3月6日金曜日の夜に家族3人でウィーンの旧市街にあるGartenbaukinoという映画館で行われた「Back to the Future」30周年記念上映会。この映画館、ウィーンで唯一マルチプレックス化されていない映画館。巨大なスクリーンのある736座席の上映ホールが一つだけ。下の写真の1960年に出来たほぼそのまんまの状態が保たれています。当然ながら映像・音響機器はアップデートされてお画像も音質も文句なし。
引用/Source: http://www.gartenbaukino.at 
この晩一回限りの上映と言うこともあってほぼ満席。ノスタルジーでわれわれと同世代がおおいかなと思いきや、ほとんどが十代後半から二十代前半ぐらいの若い人たち。上映中に歓声が上がったり、拍手があったりと大変な盛り上がりでこちらまで楽しく盛り上がりました。ちなみに僕は、この映画を封切りされた時に、当時ガールフレンドだった今の妻とのデートで出来たばかりの有楽町マリオンで観ました。まさに痛快活劇と言う言葉がぴったりのこの映画、今観てもその面白さは色褪せず、次女もとても面白かったと喜んでいました。やはり映画は大きなスクリーンで観るのが楽しいですね。

翌日の土曜日(3月7日)には、次女の誕生日パーティーで友達を呼ぶから、ちょっと出かけていてねーとの事で僕と妻はアメリカ人の友人を誘って、「Selma」(セルマ)を観てきました。奇しくもこの日は、この映画の中心となった1965年血の日曜日事件50周年にあたる日でした。アメリカ公民権運動を主題とする映画・テレビ番組は数多く作られていますが、それでもとても観る人にとても大きなインパクトを与えるストーリーで映画としてもとても良く作られている映画だと思いました。映画の後は、南部で生まれ育った友人とアメリカの人種問題について食事をしながら語り合いました。アメリカでは未だ、警官が黒人を射殺・負傷させる事件が多く起きていますがこのような人種問題はアメリカ深く根付いたある意味では負の文化の一要素だと思います。「Selma」の日本公開は今年の6月頃になるようですので是非ご覧になられることをオススします。

公式予告編です:




2015年3月7日土曜日

アウトドア カフェ

3月になってウィーンは日もだいぶ長くなってきて、寒さも和らいでいます。先日の朝の出勤途中に旧市街の目抜き通りであるグラーベンでは、カフェの屋外スペースの設置が行われていました。結構大掛かり。


寒さが和らいだとはいえ、最高気温が7〜8度、最低は零度前後ですので、日が暮れたら寒い。でも帰宅時には長くて暗い冬の間外に出れるのを待ち構えていたかのように暖かい外套に身をくるんだ人々で賑わっていました。ウィーンに来た当初は寒いのによくやるな~と思ったのですが、数年もいると彼らの気持ちが良く判るようになったような気がします。




前の関連ブログの記事もご参照あれ:
http://isakusphere.blogspot.co.at/2013/03/cafe.html

2015年3月5日木曜日

ウィーン医学大学付属ジョセフィーヌム博物館/JosephinumーCollections of the Medical University of Vienna



話は前後するが、先週、ウィーン医学大学付属ジョセフィーヌム博物館のツアーに参加。

ここにはもともと18世紀終わりに出来た、現代の医学教育の原型になったとも言われる医療教育機関がその前身。 医学生でアルバイトのガイドさんの話だと当時のオーストリアの医療従事者は、大学を出たけど臨床実務経験の無い内科医と、大学を出ていないけどマ徒弟制度で訓練を受けた実務経験豊富な外科医に分かれており、当時の皇帝ヨーゼフ二世はこの2つの異なる医療教育・訓練制度を統合した新しい教育機関の創る構想を立ち上げたが当時の大学教授たちの大反発にあい、結局は自らの指揮下にあった軍隊の軍病院を新たに創って、その付属機関としてスタートしたとの事。何時の時代も既得権を持つ保守的な人たちは新たな試みに反発するのだな、相手が皇帝であっても、というところが面白いエピソードであった。

当時新しく作られたこの教育機関はk. k. medizinisch-chirurgische Militärakademie となずけられたが一般的にはJosephsakademieと呼ばれていたらしい。ここでは、ラテン語では無くドイツ語で教える、選ばれて入ってきた学生は授業料がもちろん無料でさらに生活費も給付されてたとの事。当時としては革新的な教育機関であったそうだ。 

この博物館は、医療関係の歴史的書物や医療機器所を蔵物としているが特筆すべきが1200個近い蝋の解剖学用モデル。個々の臓器から等身大の全身人体モデル (5~6体)まで。医療教育のために皇帝ヨーゼフ二世がフィレンツェの工房に発注、ウィーンに搬入したもの。電気の無い時代には当然ながら冷蔵施設もなく、冬期以外はこのような蝋のモデルは当時としては画期的に重要な教材で医療教育の進歩に大いに貢献したとのこと。もともとはボローニャで作られ始められたものが、フィレンツェに渡り、さらにイギリスにも伝わったとのこと。尚、蝋人形で有名なマダム・タッソーはもともとこのような蝋細工で修行してとのことです。 暑いと溶け、寒いと硬くなってもろくなる蝋の解剖モデルを鉄道も無い時代に、アルプスを越えてウィーンに運ぶのは大変な偉業であったらしい。これも当時のオーストリア帝国の繁栄がいかにすごかったからを表す一エピソードである。

ちょうど啓蒙主義が台頭した当時、自然科学の研究が進み、人体の仕組みを明らかにしようとする試みも多く探究され、その結果としてこのようなモデルが作られていったとのこと。蝋モデルを作る職人は、解剖学者の解剖に立ち会い、石膏で臓器等の方を取りモデルを作っていたようである。上の写真ように如何にも教育教材といったものから、下の写真の様に芸術の域に達したかと思われる物まで数多く展示されている。

Josephinumの公式サイト(http://www.josephinum.ac.at/)より引用

代表的な啓蒙専制君主の一人とされる皇帝ヨーゼフ二世は、ここが設立された当時からこれらモデルを一般公開していたとのことである。

このような蝋の解剖モデルはフィレンツェ大学付属ラ・スコペラ自然史博物館ボローニャ大学人体解剖博物館でも展示されている様である。

ウィーン医学大学付属ジョセフィーヌム博物館のHPはこちら。:http://www.josephinum.ac.at/?L=1

一般開館日は毎週金曜と土曜日、10時~18時。入場料は4ユーロ。場所も旧市街から程近い場所なのでウィーンを訪れるさいには立ち寄られることをお薦めする。



2015年3月3日火曜日

Niederalplでスノーシューイング



一昨日(3月1日 日曜日)に友人達に誘われて、妻とスノーシューイングに行ってきました。場所はNiederalplと言うアルプス山脈の東端の地域でウィーンから南西に車で約1時間45分ぐらいのところ。一番高い場所の標高は1600mぐらいの山・高原です。前にブログに書いたラクス高原(こちら→http://isakusphere.blogspot.co.at/2012/06/blog-post.html)の近く。

スノーシューイングは現代版西洋かんじきを履いての雪山ハイキング。妻は2度目で僕は初めて! 8人のグループで山岳ガイドさんを雇ってのツアー。最初に標高差500mほどののぼりががあってキツかったのですが、その後は挽回し楽しめました。降雪後に人が踏み入れた跡が無い高原を歩くのは気持ちよかったです。風もなく、気温もそんなに低くなかったのもよかったです。休息入れて、7時間あまりの大自然の中でのお散歩でした。