帰省中に買ったのですが、今回の一時帰国はなんかバタバタとして気忙しく、ウィーン戻って2週間ほどたった今読み終えました。前作の1Q84は話の展開が想像できて他の作品のようにハマれずにちょっと期待外れなところがあったのですが、この作品はそのようなことはなく、特に最初の十数ページをすぎてからはほぼ一気に読み通してしまいました。
村上春樹氏の他の作品にも見られるように話にでてくることのすべてが完結するという小説ではないので読後感がよくないという人もいるのではないかと思われます。僕を含めた日本人の多くはは、英語の表現を借りると ”no loose ends” (結びがないところを残さない)というのが好きなのでこのようなエンディングには欲求不満がでてくるのかもしれません。「後は読者の想像にお任せ」というパターンはアメリカの小説や映画でしばしば見られるので、これはこれで村上氏の意図なのかもしれないし、もしかすると前作のように続編がすでに計画・用意されているのかもしれません。
「ねじまき鳥クロニクル」も初めて読んだときは第2部のあとなんかもやもやした中途半端な気持ちが間をおいて出版された第3部を読んでやっと収まったのですが、数年後再読したときにはなんか第3部が第1と2部とは少し軸・雰囲気がずれており一貫した統合性が無いように感じやっぱり第2部までで良かったのかもしれないなと思った記憶があります。
「色彩を持たない多崎つくる...」を読み終えた後にネット上に投稿されているこの作品の批評・感想の一部読んでみました。村上春樹氏の小説は思考よりも直観に訴えるものだと思うので極端に評価が分かれるということ自体不思議ではありません。ちなみに妻は村上春樹の作品が全くダメです。しかしどう読んでも中傷でしかないとしか思えないものもたくさんあったことは残念。村上氏ほどの著名作家になるとこのようなことは致し方ないのかもしれませんが、そこまで書かなくても良いのではと思うのも多かったです。インターネットの匿名性の弊害でしょうか?
お個人的には面白くておすすめの作品です: